空冷55mmエンジン作り直し

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足掛け2年もの長期に渡って楽しんだ水冷化実験でしたが、 後付けウォータージャケットでは微少な冷却水の漏れを克服できず、 漏れた冷却水がプラグに掛かり始動不良に悩まされるなど、 スイッチひとつで確実に動いてほしい普段の足としては難のある状況に終始しました。
 
究極のパワーを求めるための改造であれば、少々の扱い難さを許容しつつも高回転/高出力を追い求め、 その冷却のために水冷を維持したと思うのですが、 当時あまり例の無い「4VPシリンダの水冷化」が主目的だったため、 ある程度動いてしまうとモチベーションの飽和は避けることができませんでした。
 
“ハイパワー水冷”ということになると、当時すでにNSRやRSのシリンダを積んだ車両が存在していましたからね。
 
悩みながら越した冬が春になろうとする、ある日、突然エキパイからモウモウと上がる白煙。
またヘッドO-リングのブローですよ、2度目です。
耐熱仕様のO-リングを使ってるのにブローするんだから、設計形状に重大な問題があるとしか思えません。
 
限界です。
そろそろ後付けウォータージャケットの限界を受け入れるべきでしょう。
 
水冷化工事、楽しかったです。
エンジンなんてけっこう思いつきで作っても、動くところまではできるもんだなぁ、という実感を得ました。
ただ、普段の足として安定した性能を期待するには美しく組み上げることも必要なんでしょうね。
 
 
 
 

ピストン選定/カメファクピストン

さて、空冷に戻すと言っても、水冷前に使っていたシリンダーは謎の異常打音が発生していて、 これも安定使用ができる状態じゃありませんでした。
(→水冷化試走編、逃げ道なし
ですが、この時期ランナーがオーバーホールで不動であったたため、 異常打音には耳を塞いで、なるべく回転を上げないよう、騙し騙し乗りながらピストン、シリンダーなどの用品調達に奔走しました。
 
新たに用意するピストン/シリンダーですが、 水冷エンジンで使用していたカメレオンファクトリーの54mmピストンをまた使いたかったんです。
Gアク用ピストンとしては純正に次ぐ軽さで、軽やかに回るエンジンに仕上がってました。
なので今回もカメファクの54mmピストンを使おうと決めていました。
 
前回手配時と同様、Nap's世田谷で取り寄せてもらうことにしました。
Nap'sで「カメレオンファクトリーのGアク用ボアアップピストンキットを」とカタログで探してもらうと、 「メガトン120ピストンキット」なんて書いてあるんです。
(あれ?確か110じゃなかったっけ?)と思ったのですが、チョロッと安くなってるし、 「まぁ、とうとう54mmは絶滅かな?最悪55mmのピストンが来ればイイや」なんて軽く考えて手配をお願いしちゃったんです。
 
ところが〜、届いたピストンはなんと57mm!
かたくなにミドルボアに拘っていると思ってたカメファクが突然ビッグボアに方針転換?
 
まぁ、重量データとかは持っておきたいし、 今手元にある4VPシリンダーで57mmエンジンを作るなんてことも将来的にはあるかもしれません。
 
 

これがカメファクの新57mmピストン。
ピストンとリングと合わせて141gありました。
価格は\13,440でした。
 

こっちは旧54mmピストン。
ピストンとリングと合わせて124gでした。
価格は\14,700でした。
 
 
新しい57mmピストンは下の54mmとは側面形状がガラリと変わっています。
というか、ただのタイワンピストンです。
 
 
ご参考までに、色々なピストンの重量をまとまましたので、どうぞ。
ピストン重量表
 
 
 

J.C.C.製55mmピストン

焼き付きとか水漏れとかのショボいトラブルに嫌気がさして空冷ミドルボアに戻ろうとしてるのに、 57mmピストンなんて使う気にならない。
 
日本製のピストンがもう手に入らないなら、いっそミドルボアのタイワンピストンでもイイよね。
と、開き直ってヤフオクを覗いてみると55mmのピストンが\3,000台でゴロゴロ出てます。
以前ランナー用にタイワンキャブを買ったことのある某ショップが出品してたものを希望落札額で入札。
入札から二日で手元に届きました。
 

J.C.C.製55mmピストン。
ピストンとリングと合わせて131.3g(エキスパンダ含む)です。
側面形状とかはカメファクピストンと同じ典型的なタイワンピストン。
代金は送料と併せて\3,180でした。
 

このピストン、トップとセカンドで違うリングが指定されていて、 セカンドリングの内側にはエキスパンダリングを入れる仕様になってます。
 
 
2種原付のピストンにそこまでの品質が必要かどうかわ分からないけど、 部品構成だけで見るとJ.C.C.製のほうが高級です。
 
Gアク用ピストンでトップとセカンドを使い分けてるピストンって初めて見たなぁ。
今回はこのJ.C.C.製ピストンでエンジンを作ることに決めました。
 
 
 

シリンダーボーリング

今回はちょっと前、もといちさん という方に教えてもらった内燃機屋さんに持ち込みます。
 

横浜鶴見区のヨシダ精機さん。
(→Yahoo電話帳
鶴見の工業地帯、静かな公園の横にある内燃機屋さんでした。
木曜日持込→週明けの火曜日に引取、となりました。
加工代金は\6,000でした。
 
 
ボーリングに出すにあたって、クリアランスは0.06mm(下限0、上限0.01)を指定しました。
現在異音が出たまま乗っている空冷55mmシリンダの0.08より少し小さめにしました。
ノーマルシリンダーは、シリンダやピストンが磨耗してクリアランスが0.05より大きくなったら交換せよ、ってことになってますが、 どうせ高圧縮ヘッドやらチャンバーやらで熱的にキビシくなるので、クリアランスはノーマルよりは大きく、 「ちょっと大きくし過ぎたかも」という前回よりは小さく、ということで0.06〜0.07の間に指定した、というわけです。
 
4VP水冷シリンダーは0.04にして何度か焼き付きましたが、クリアランスが小さかったからというよりは、 燃調や冷却や潤滑の問題が起る度に焼いていた、といったところで、 問題なく回っているときのエンジン回転はとても軽快でした。
クリアランスがキツ過ぎであったなら高回転が回らないなど、別の不具合も出ていたでしょう。
 
ノーマルマフラー1本で行くのなら0.05ジャストくらいで燃費向上を狙ってみるのも良いかもしれませんね。
 
ちなみにカメファクピストンの説明書きにも6/100(0.06mmのこと)でボーリングしろ、と書いてあります。
ただし、上限値も下限値も書いてありません。
しかも54mmでも57mmでも何の注釈もつけずに「6/100」と同じ値を書いているので、 技術的裏づけがある数値なのかどうか不明です。
 
ここで、クリアランスって何?(どこの寸法を言ってるの?)という問題について。
よく「クリアランスひゃくぶんの○○でボーリングしてもらいました」とかって書いてあるページがあるじゃないですか、 というかわたしも過去に同じように書きました。
(→4VPシリンダー水冷化、その1
でも、このクリアランスってどういう状態のときに測定される数値なの?
Gアクのサービスマニュアルを見ると、ピストンとシリンダの隙間に0.05mmのゲージを刺して、入るようなら交換って書いてあります。
チョイ古いAxis90のサビマでは「シリンダ内径とピストン外径を測定して、その差が0.05以上だったら交換しろ」って書いてあります。
結局どっちも同じ、内径と外径の絶対値の差をクリアランスと呼んでいるわけで、 エンジン運転状態ではクリアランス値の1/2の厚みの油膜が、シリンダとピストンの間をまんべんなく満たしている状態を理想とする、 という表現のようです。
Gアクのサビマほうが新しい編集なので、より現実に則した表現になっている、といったところでしょう。
 
内燃機屋さんにボーリング加工を依頼するとき、シリンダといっしょにピストンも渡しますが、 仕上がりに際してピストンとシリンダの隙間寸法を確認してるんだと思います。
ピストンの外径を正確に測定できる環境をお持ちなら、シリンダだけを持ち込んで内径値を指定して加工してもらうこともできるはずですが、 無難な方法として、「添付ピストンとのクリアランス○○mm(できれば上限と下限も)」とピストンをいっしょに渡して依頼する、と。
 
Gアクの約50mmのピストンで0.05mmのクリアランスが必要、ということは、 熱変形を生じる機械の穴と軸のクリアランスとして「一般的に直径の1%」ってことなんでしょうね。
 
なお、このヨシダ精機さんは、NSR250やRS250/125のアルミシリンダの再メッキも取り次いでくれるそうです。
わたしはジレラ・ランナーのシリンダーを再メッキできないか聞いてみたんですが、 シリンダごとにメッキ用の冶具が必要になるらしく、今のところはRSやNSRしか受けてないそうです。
 
 
※補足情報
以前Noripapaさん のオフ会でお会いしたヨシムラさんという方がアルミシリンダのメッキ依頼先について情報を送ってくれました。
内燃機加工で有名な井上ボーリングさんが2stシリンダーのボーリング&再メッキを扱っているそうです。
ヨシムラさんは4stですがDRZ400のアルミシリンダーをボアアップのうえ再メッキしてもらったのだそうです。
→ヨシムラさんのボアアップ記事
 
ポート加工の失敗なんかでメッキ層が剥離(わたしもやりました)したシリンダーを、 徹底的にポート加工した上でボーリング&再メッキ、なんてこともできるかもしれません。
→井上ボーリング
→2stに関する記事
 
 
 

シリンダーポート加工

ポートの加工は水冷54mmとほぼ同じとしました。
シリンダのベース面も水冷や前回の空冷55mm同様1.5mm削ってあります。
(→φ55シリンダー投入編
 
今回はそれに加えて、掃気ポートへの流路(給気口とでも呼びましょうか)の形状を変える加工をしてみました。
 
仕事柄、NSR、RS、YZやKX等のシリンダーを見る機会があるのですが、 これらの高回転高出力マシンのシリンダーに共通して見られる形状の一つが、 「扇形に広がった給気口下面形状」なんです。

これはRS125(年式不明)のシリンダーですが、 左右の掃気ポートへと向かう流路、ベース面での形状が扇形に広がっています。
YZやKXも同様の形状になっています。
 

これは4VPシリンダーの給気口、加工前の形状。
扇形ではなくてカマボコ形(?)の形状です。
 
というわけで、4VPシリンダーの給気口も扇形形状に変更。
 
なお、ご参考までに色々なシリンダーの写真を上げましたのでどうぞ。
 →シリンダー色々
 
 

加工後の形状。
排気側の辺の角度を、ボア中心を向くように変更。
横幅も残り厚みが2mm程度になるまで広げました。
 

オイルポンプ回避形状を残すので左右の形状は同じになりませんが、 混合潤滑にしてしまえば左右対称形状にすることも可能。
 
ここの形状はクランクケースのほうもいっしょに変更するのが理想のはずですが、 気が向いたらエンジンを降ろして加工することにします。
ちゃんと切り粉がケースに入らないように工夫すれば、ケースを割らなくても加工できますから。
(参考:ケース割らないでランナーのリードバルブポートを加工
 
 
 

HIDヘッド、Ver.2.1

今回の改造では排気量は変わらないのでヘッドのプロフィール変更は必要ないはずなんですが、 水冷の前の55mmヘッドは水冷ヘッドに比べると若干パワー感が物足りない感じがしたのと、 カンカンバリバリという異音が、もしかして爆発圧力漏れかな?なんても思ったものですから、 良い機会なのでヘッドを作り直すことにしました。
 
「パワー感が足りない」ということに関しては、エンジンを掛けるときのキックの重さやセルも回り方が違うので圧縮が違う (水冷のほうが圧縮が高かった)というのは間違いないです。
でも、なんかそれだけではない気が....
水冷の前のヘッドと水冷ヘッドでは容量は0.5ccしか違わないんだけど、 感覚的には1〜1.5ccくらいは違うような、そんな感じです。
 
水冷のほうのヘッドは燃焼室形状をランナーのエンジンのために作ったヘッドの形状を模して作りましたが、 この燃焼室形状での走行フィーリングが気に入ってたので、今度の空冷ヘッドでもこれに近い形状の燃焼室にしたかったのです。
水冷ヘッドはアルミのムク材からの削りだしのため自由な形状で燃焼室を作ることができたのですが、 空冷ヘッドは純正4VPヘッドがベースであるため、水冷ヘッドのように自由な形状で燃焼室を作ることができません。
「自由な」といっても、何も奇抜な形状で掘り込むわけではなくて、プラグを2mmも上げてやれば水冷ヘッドと同じ燃焼室形状を作ることができます。
 
4VPヘッドを「削り」だけで容量調整する場合、目指す容量が大きくなるとその容量を確保するために燃焼室が横に広がって、 どんどん平べったい形状になっていきます。
水冷で作ったヘッドは燃焼室を上(というかプラグ方向)に伸ばして、代わりに燃焼室直径を小さくしたものでした。
なので4VPをベースにしてこの形状を再現するとなるとプラグの位置を上げる必要があるんです。
 
ただ、プラグを2mm上げるということは、プラグネジの掛かりが2mm短くなるということであり、 「爆発圧力に耐えることができるのか?」「プラグの熱をちゃんとヘッドに渡すことができるのか?」みたいな不安があり、 これまで手を出したことはありませんでした。
でも、「どうしてもあの形状を再現してみたい」となるとプラグを上げるしかない....
まぁ、やってみましょうか、壊れたら壊れたで、いつものことですからね。
 
 
 

削り上がったヘッド。
オーバーストローク吸収分を含めて18.75cc、オーバーストロークがなければ14ccに相当する容量です。
Ver.2.0より掘り込み量が多いので作業時間が掛かります。
 

水冷エンジンのヘッド。
オーバーストロークなしの容量は新ヘッドと同じ14ccです。
 

これは水冷の前に使っていた55mm用のヘッド。 (→φ55シリンダー、ナラシ/当り取り
14.5ccなんですが、プラグ位置が低いため、燃焼室が横に広い形状になってます。
 
 
その他のポイントについて。
 
以前の空冷ヘッドはロングストローク化に伴うオーバーストロークをスペーサーを噛ませることで吸収していましたが、 「エンジンから出る異音が圧縮漏れかも?」という可能性があったので、 今回のヘッドは水冷ヘッドと同様、スキッシュの掘り込みでオーバーストロークを吸収する形にしてみました。
 
ヘッドとシリンダーにノックピンを設けて、組立時に簡単にヘッドとシリンダのセンター合わせができるようにしています。 これは以前の空冷ヘッドと同様です。
水冷ヘッドはヘッドの段差がシリンダスリーブと噛み合ってセンターを出す形にしていたのでノックピンは使っていませんでした。
 
ヘッド温度センサー は今度のヘッドにも導入します。
というかこのセンサーはこの新ヘッドのために取り入れたもので、 前回の記事はテストの意味合いも含んでいたんです。
 
 
 
 

プラグスペーサー

 
ヘッド燃焼室形状の変更でプラグを2mm上げることにしたので、その2mmのためのスペーサーが必要です。
 
単純に平べったいスペーサーでも良いかと思うのですが、 先に書いた「プラグの熱をヘッドに渡す」という機能を少しでも確保するために もうちょっと凝った形状のスペーサーを作ることにしました。
 
以前、「えるえすさん」という知り合いから、JOGのヘッドにロングプラグを使うために 6mmのプラグスペーサーのオーダーを頂いたことがありました。
そのスペーサーは中心穴にプラグ穴と同じネジを切る形でしたが、えるえすさん曰く 「単純な穴よりネジ穴のほうがプラグとの接触面積が増えるので、より効率よくプラグの熱をヘッドに渡すことができる」 とのことで、そこまでの機能が必要かどうかは別として、確かに理にかなっています。
先にピストンの項でも「2種原付のピストンにそこまでの品質が必要かどうかわ分からないけど」と書きましたが、 できそうなことはなんでもやってみたくなるのが改造者の身上ってものですよね。
 
と、いうことで、スペーサーにはネジを切ることにして、スペーサーとプラグの接触面積がより大きくなるよう、 ロングプラグを使う(ネジ長さが長くなるので接触面積も増える)ことにします。
 

で、どうせ作るんならプラグスペーサーにも放熱させてしまえ、 ということでスペーサー外周にフィン形状を設けてみました。  

これで、「ショートプラグ相当の突き出し量で、更に2mm上げ」という寸法です。
 
 
 
 
 
これで新エンジンが始動可能状態となりました。
 
今回のエンジンは水冷後の空冷(ヤンチャ後の反省)ということもあり、あまり高出力を求めたりせず、 常にセル一発始動で燃費は20km/h台をコンスタントに出すような優等生タイプ(当社比)を目指したいと思います。
 
そうは言っても、「気が向いたらエンジンを降ろしてケース側の給気口形状を加工」とか考えてるワケですから、 まだまだ茨の道は続くんでしょうねぇ....
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