クランクシャフト交換:葛藤、そして旅立ち編

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前回の出会い編では軽い気持で作業を始めたところ、 組みあがりの回転がイマイチ渋く、 もう一回やり直すことにしました。
 
 
 

ケース開け直し

出会い編の最後で、Feng-Mingクランクはベアリング付きで抜けてくるのが分かったので、 ケースを割ってクランクを抜くのであればクランクシャフトからベアリングを抜く手段が必要になります。
 
内輪を引くプラーは持ってますが外輪を引くのは無い....「また工具買うのかヨ....」
色々探しても安いものでも\9,800(税抜き)、 オレ何やってんのかなぁ、セパレータとインストーラですでに2万、 この上ベアリングプラーで1万って....
最初から内燃機屋さんに依頼したほうが安いに決まってる。間違いない。シクシク....
 
 

板橋のWIT で税込み\10,290
クランクシャフトにハマったベアリングも クサビ形の輪っかで挟んで取外せます。
 
 
そんでもってこのベアリングプラーの上半分、 何とクランクケース割りにモッテコイ。
セパレータと買う順序が逆だったらセパレータは買わなかったかも。 まぁランナーのケースにはどっちが使えるかワカランし、 ベアリングプラーは前から欲しかったアイテムだからな(泣)
 
 

ベアリングプラー使ってクランクケース割って見ました。 3本腕のセパレータより楽に割れます(泣....つーかもう涙は枯れた)

で、ベアリングプラー使ってクランクベアリングを抜く。
 
 
 

回転が渋い原因が判明

ケースを割りなおした時、先にジェネレータ側のケースを取外したので、 ミッション側のケースにクランクが残りました。 この状態でオイルシールを抜いてクランクシャフトを回して見たら結構渋いんですよ、回転が。
 
回転が渋いのって、クランク圧入の失敗で左右のベアリングが軸方向でツッパリあっているのが原因だと思ってたんですが、 ベアリングが片側だけになっても回転が渋いって、 軸方向のツッパリは関係ないってことですか?
 
そう言えばヤマハクランクを抜いたときはベアリングがケース側に残ったのに、 Feng-Mingクランクを抜いたらベアリングがクランクにくっ付いてきたってことはつまり....
 

クランク軸のベアリングとの嵌合部の外径を測ってみました。 普及品のマイクロメーターなので数値がピタリとは出ませんが、
 
ミッション側外径ジェネレータ側外径
ヤマハ25.002〜00525.002〜003
Feng-Ming25.007〜00825.007〜008
 
と、全体的にFeng-Mingの方が太め。 ベアリングのほうは穴径が正確に測れないのでなんとも言えませんが、 同じベアリングを使うならFeng-Mingのほうが回転が渋くなることは有り得ます。
 
と言っても、軸を0.002mm細くするなんて魔法は使えませんから、ある程度渋いのは受け入れるしかないでしょう。
エンジン運転時は熱膨張でクリアランスが増えるのでちょうど良いのかもしれません。
 
ただ、前回、クランク圧入の前後で渋さが違ったので、 圧入の仕方でもうちょっと渋さを改善できそうです。
 
 
 

圧入工具の改善

クランク回転の渋さが改善できるかどうかは別として、 次の圧入作業に向けて工具類の改善を図りました。
 
 
 

ベアリングインストーラですが、前回ベアリングが入り始めに斜めになってしまいました。 圧入治具が傾かないようにしたらどうだろう、 ということで治具をナットで挟んでスタッドと剛結することにしました。
 
これは効果がありました。
特に気をつけて操作しなくてもベアリングが真っ直ぐ入っていきます。
 
 
 

クランクインストーラの先端に圧入したカラーは、挿入途中でクランクの段差が入口に引っ掛かって、 何度か緩めてセンタリングしてから再度締めるという操作が必要になりました。 カラーの入口に10°のテーパーをつけてみました。
 
これも効果あり。
何も気にしないで締め込んで行っても引っ掛かりなく挿入されていきます。
テーパー面に圧痕が付いてますが、 クランクの段差がテーパー面を滑ってセンタリングされたことを示しています。
 
 
 

クランクインストーラの完成状態、 ナットとポットの間にスラストベアリングを入れてあります。
ベアリングは単式スラスト玉軸受「51102」、 東急ハンズ渋谷店 で\840でした。
 
このスラストベアリングはたまたまハンズに行ったときに思い付きで買ったものです。 思い付いたときにジャストサイズの品物が見つかるのがハンズのビジネスモデルだ。 ただし「どーやっても使えねーだろ」みたいなものもいっぱいあるのもハンズの面白さだ。
それはさておきコイツも大当たり。ベアリング入りインストーラでクランクを入れていくと、 ナットの回転が軽くなるため「クランクが入り切って止まった感触」がダイレクトに手に伝わってきます。
また、ナットを回転させるトルクも小さくなるのでポット回転止めの工具が不要。 左手でポットを握って右手でナットを締めていって、 手に「カチッ」とした感触を感じたらそこで右手を止めて終了となります。
 
 
 

バラした用品で予行演習

この時点で新品のベアリングが手元にないので、 改善した工具の性能検証と、慎重に作業を行うことで回転の渋さが改善するかどうかを確認するため、 バラしたベアリングを使って予行演習をしてみました。
 
 
ケースのバラしはベアリングプラーで行ったところ、3本腕のセパレータよりしっかり固定されて、 プッシュロッド先端がクランクのセンターホールを確実にロックする構造のため、 作業が確実で所用時間も短縮できました。
 
ケースへのベアリング圧入とミッション側クランク軸の圧入も、 前述のように一発で確実に終了。
 
ジェネレータ側の軸圧入は今度は慎重に。 ここでも改善点が光ります。
インストーラナットの回転が渋いとナットの回転がポットやスタッドのねじれとして蓄積することがあって、 「もうちょっと」と思ってナットを回した瞬間に溜まっていたねじれが一気に戻って、 軸を引きすぎて圧入失敗になるんです。そう、前回のように。
でも今度はナットの座面にベアリングが入ってます。 ナットの回転が軸の引き量にダイレクトに反映されるので微調整が確実にできるようになりました。
 
ケース連結ボルトとインストーラをシーソーゲームのようにジワジワと締めていって、 連結ボルトに規定トルクを掛け、 インストーラナットを慎重に回しながらクランクの回転が軽くなる一瞬を探します。
 
うん、納得の作業終了。
前回終了時よりはだいぶ滑らかに回るようになりました。
フリーのベアリングのように「シュルルルルーン」というワケにはいきませんが、 元々こういうものだったのかもしれません。
自分にできる最善の策を講じて組みあがったんだから、 ここで納得するのが合理的な終了点というものでしょう。
 
ちなみに圧入→抜き取り→再度圧入、とスラスト負荷かけまくりのクランクベアリングですが、 特にゴリゴリと引っ掛かりがあるわけでもなく、 クランク抜き差し程度の負荷では圧痕が付くことはないようです。
 
 
 

21世紀のクランク挿入方法とは?

一回目の挿入と失敗をアップロードすると、 たかっちさん が隔離病棟で「難しく考えすぎてますよ、複雑怪奇に追求しなくても、逝ける筈なんですがねぇ^^;」 と。
 
また、別件でH.I.D.に注文を頂いてたお客さんから注文メールの中で、 「アクシス90のときはYAMAHAのポットも、クランクインストラとベアリングの間に クランクインストラスペーサをいれて、ベアリングの内側を突っ張る形になって いたと思うのですが……。」との情報。
 
しかしグランドアクシスのサービスマニュアルにはインストラスペーサは出て来ないので、 インストラポットだけで入れるのが現在のヤマハオフィシャルの方法のようです。
 
ここまでやってきて、なんかこう、点と点が繋がって線になった感が。
 
クランク交換に先だって、左右ケース、ベアリング、クランクの各部寸法をCADに入れていって、 最後に残るクリアランスを出してみたら0.1mmでした。
これはあくまで図面上の話しであって、0.1mm単位で採寸/入力してるので、 ヤマハのクリアランス設計値はほぼゼロと考えても良いかもしれません。
 
クランクやケースを加工する機械は年々性能が向上して、 製造される部品の精度は上がってきています。
これは他社との競争のために製造先を台湾に移管したり、 熟練技術者が定年で現場を去ったりで組立技術の低下が進むのと表裏一体の流れであったりします。
 
先に「クリアランスの設計値はほぼゼロかも」と書きましたが、 いっそのことクリアランスゼロの部品を製造してしまえば、 あとはタイワンのオバチャンが「覇阿!」と力任せに圧入しても、 廃車までノーメンテ/無改造の通勤車には十分使えるんでしょう。
 
つまり、ヤマハのインストーラもある時期まではスペーサを使うことによって、 ホンダのようにベアリングの内輪で突っ張る構造になっていたんじゃないでしょうか?
これは組立者が作業時に微調整する必要がありますが、 部品精度はそれほど良くなくても済みます。
それが製造のグローバル化と組立技術の低下により、 力任せに引張っても誰でもソコソコにクランクを挿入できるようにする必要に迫られ、 部品精度を向上させることにした。
その結果インストーラスペーサは実用的には不要となり、 現在のポットだけの形に落ち付いた、と。
 
 
 
結局、たかっちさんの言う通り「考えすぎ」なんでしょうね。 少なくとも4VPのケースにヤマハと同等の精度のクランクを入れるなら、 かなりテキトーに引張っても普通に使えるエンジンになるんだと思います。
 
ただ、気合を入れて調整するともうちょっと滑らかに回転するようになるのも確かです。 バラした部品でクランク圧入をやりなおしてみたところ、 バラす前よりも渋さが少なくなりましたから。
 
 
 

ベアリング再手配

やり直しとなる今回はちゃんと6205のシール無しを手配しました。
物は試しと近所の金物屋さんで取り寄せてもらいました。\520でした。
刻印が光って見えないけど NSK JAPAN
前回改善したベアリングインストーラでサクッ、キッチリ、と圧入。
 
余談ですが、ベアリングの刻印をどっちに向けるのか....
どっちでもいいんですよ。
 
 
 
 
 

最後の圧入作業

ミッション側の圧入
B-Tunedインストーラー(前回参照)で手にカチリと手応えが来たところで完了。 インストーラナットは雑念が入らないように目をつぶって回しても良いかもね。座頭市みたいでカッコイイ。
 
ジェネレータ側の圧入
ケースが閉じる直前までは前回同様、コンロッドをケースに挟まないように注意しながら インストーラナットを締めていく。
 

最後、ケース連結ボルトとインストーラナットを交互にチビチビ回していって、  
ケースが閉じたらボルトに規定トルクを掛ける。 この時点ではインストーラーポットごとクランクを回すとかなりの抵抗があります。 “チッ”とナットを回してはポッドを揺らして抵抗が抜ける瞬間を探る。 フッと抵抗が抜けたらナットをリリースして終了。
 
 
 

オイルシール圧入

シールにφ40mmのアルミパイプを当ててベアリングプラーで押しました。 最初にリップをちゃんと入れれば、こんなもんでもちゃんと圧入できますよ。
 
 
 

作業終了

これで腰下は完成。
ロングストローク化でピストンの突出しとポートタイミングが変わってしまうので、 エンジン稼動にはこれらの調整が必要になります。
 
 
 

引き続き、腰上調整へ

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