クランクシャフト交換序章:出会い・裏切り

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2000/5月の納車以来、早4年。2004/12月時点で走行距離は3万7千キロ。
3万キロというとクルマなら10万キロに相当するくらいの距離、 「買い換えますか」とか言われても不思議じゃない。
走行距離もさるころながら、度重なるピストン抱きつきや穴あきで、 エンジンの心臓ともいえるクランクには相当の疲労が蓄積してるだろうなぁ....
 
と、1年ほど前からクランクの交換を計画してたんだけど、 じっくり時間をかけて作業したかったので、 相方であるランナーが仕上るまでオアズケを食らってました。
(その1年の間に3回もピストンに穴あけてしまいましたが)
 
そして2004/10月、ランナーのロールアウト を受けてGアク休眠。
クランクシャフト交換をメインとするエンジンオーバーホール実施の運びとなりました。
 
 
 

Newクランクシャフト

せっかくクランクを交換するんだからロングストロークでんがな。
 
1年前に交換を思い立った時はロングストロークというと2〜3万したもんですが、 2004時点では\9,800とか\11,000とかで買えるようになってました。 純正より安いジャン(笑)待っててヨカッタ!なんてね。
 
1年前の時点ではPMX110という台湾製のスクーターのクランクを使おうか、と考えてました。
このPMX110のエンジンはGアクのエンジンと随所に互換性があって、 クランク、シリンダ、ヘッド、リードブロック、駆動系パーツ、 などがそのまま流用できるようなんです。(追記、リードブロックは互換性全くナシ)
クランクはストロークが50mmで排気量はノーマルボアでもPMXと同じ106.2ccに。 この情報をくれた足立のD・G Companyさん によるとPMX110の純正クランクが2万円くらいということだったので、 「値段が変わらないなら他車用クランク流用なんて話しのネタとして面白いかも」 とか思ったんですよ。
 
でも1年たったら51mmとか51.5mmとかが1万円台で買えるようになっちゃったので、 あっさりGアク用ロングストローククランクに転ぶことにしてしまいました。
 
 
 

ストローク51mm
Gアクや小マジェのパーツを色々取り揃えてる 天一堂 から買いました。
\11,000でした。
 
 
ん?Feng-Ming?
フェンミンっていえばオレが最初に買ったボアアップキット(愛称:シリンリ) のメーカーじゃん。ナツカシーなオイ!
 
ボアアップキットには「戦馬」とか書いてあったけど、こんどは「鋭馬」だって。
 
Gアク用のロングストローククランクが日本に入り始めたころは、 「51mm」と言われて買ってみると50mmだったりとか、 輸入する側もモノの素性を把握できてないなんてこともよくあったらしいんですが、 手元に来たクランクは測ったらちゃんと51mmでした。
 
 
 

フレームキャリア

ケースを割るには車体からエンジンを抜かないといけませんが、 ヤマハのスクーターはセンタースタンドがエンジンに付いてるので、 エンジンを抜くと自立できません。
 

というワケでエンジンのないGアクを支えて、 なおかつ自由に移動できる木製キャリアを作りました。

キャリアはフレームにボルトオン取付、 前後左右に移動できるよう下面にキャスターを付けてあります。
 
Gアクのメインフレームのメットインボックスを固定するマウントプレート上面には10mmの穴があいてます。 この10mm穴にM8の圧入ナット(→ カレイナット )を圧入してフレーム側の受けとし、 こことステップボードのM6ネジ穴を使って結構頑丈なものを作って取り付けました。
 
実はコレの前に2本足の簡単なものを作ったのですが、 車重を乗せたとたん「メシィーーーッ!バキッ!」と壊れてしまいました。 なので写真のものはVer.1.1です(笑)
 
なんか「車に轢かれて後ろ足が不自由になったワンコに車輪つけてやった」、 の絵を連想しますねぇ....
 
 
 

クランクケースセパレータ

セパレータとインストーラはヤマハの純正工具を買うことに決めてたので、 いつものYSP川崎中央 に注文に行きました。
インストーラは目当てのモノがあったのですが、 ヤマハ純正セパレータは1枚板で2つ穴のものでした。
三つ腕のグルグル回るヤツが欲しかったんですが....
 
すると店員さんが、 「ああ、それだったら港北のスーパーチープツールズで扱ってますよ」と教えてくれたので、 YSPではインストーラだけ買ってきました。

横浜陸運局横の スーパーチープツールズジャパン横浜店で\8,280でした。
 
でも長穴の内側をちょっとコスってやらないとGアクのケースには若干オーバーサイズでした。
 
ヤマハの純正セパレータを買えばGアクのケースを間違いなく割れたはずですが、 三つ腕のセパレータだとランナーのケースも割れるようなので、 後々のことを考えて(既にランナーのロングストローククランクも入手済み)汎用品を買いました。
 
 
 

クランクケース割る

ケースに付いてるパーツを全部抜き、 ケースのM8ネジ穴にM8の全ネジスタッド2本を差し、 クランク上空にセパレータを固定します。
 
あとは古代の拷問道具みたいにグリグリ押して行くとあっさり吐きますよ。
ほとけのはたけさんと言われたオレでもこのときばかりは容赦しない。
 
 
 

ベアリング抜く

セパレータでクランクを抜くとケースのほうにベアリングが残るので、 この古いベアリングも抜きます。
(軸やケースの出来・ヘタリ具合でクランクに付いてくることもあり)
 

抜くのと反対側はベアリングの内輪にナットを直止め。

抜けてくるほうはベアリングの外輪より大きいカラーでケースを突っ張って、 スタッドでシメてベアリングを抜きます。

ピストン穴あきの際にケース内に吹いたアルミカスがザラザラと....
 
で、カスを良く見ると薄く引き延ばされてるものがチラホラ見られるんですよね。
ベアリングに噛んでボールと軌道輪でペチャンコにされてから吹き溜まりに落ち付いたようです。
 

取れたベアリングは例によって「TAIWAN」印

交換するベアリングはすべて「NSK」、Made in JAPANじゃ。
ベアリングは日本製かドイツ製。他は認めない。
 
ベアリングは良く行く秋葉原のベアリング屋さんで買ったんですが、
「6205の解放形、2個ください」といったら、
「解放形かぁ、あ、1個だけあるよ」って1個じゃダメだからなぁ....
「じゃ両面金属シールを2個ください」といって6205ZZを2個買ってきました。
いいんよ、シール壊して取っちゃえば同じことやから。
6205ZZは1個\400でした。ヤマハから純正部品で取り寄せると\1,590だってさ!
 

せっかくケースバラしたんだからマウントベアリングも抜く。
ここのベアリングもクランク用といっしょに買った6003DUで1個\360。
ヤマハ経由だと6003LUになって\2,040....
スターターギアのベアリングもこれと同じなのでいっしょに抜いて交換しておきました。
 
 
 

クランク投入準備

純正新品クランクを入れるだけなら、何も考えずにパタパタと作業を進めるんですが、 ロングストロークとなるとケースやピストンとの干渉があって当たり前っぽい。 くわまんさんvuuさん改造小僧さん、 みんなどこかしら削って入れたそうです。
オレのエンジンだけ特別どこも当らないなんてあり得ないので最初から当りを取りに行きます。
 

ジュラコン製ダミーベアリングです。
ケースに圧入した状態でクランク軸をスコスコ抜き差しできる寸法で作ってあります。

クランクベアリング圧入のために専用治具を作りました。
内輪に当る部分を段差をつけてサラってあるので、 内輪に負荷を与えずに外輪だけを押せるようになっています。

反対側も専用治具。
オイルシールが入る部分を避けて、ベアリング外輪が入る部分の真裏を押すようにしてあります。
これは左右のケース形状が違うので、右用と左用で2個作りました。

エンプラとはいえジュラコンだってプラスティックなので、本物のベアリングより軽く入ります。
本番に向けての予行演習にちょうど良いですね。

でもってクランク差して回すと一回転もしないで「ゴギッ」と止まりました。
ケース下側をコンロッドが通過してきません。

クランク抜いて、当ってたところをリューターでコスります。
何回か差しては回して、通るようになるのを確認、と。
 
次にクランクウェブの干渉チェック。
コンロッドが通るようになった時点でクランクが一回転するようになったので、 干渉がないと判断できるんですが、 「ホントーかな?」と短冊状のコピー用紙を差し込んでみました。
一枚入らない(汗)。
この紙をマイクロメータで測ったら厚さ0.1mm。 入らなかったのでクリアランスは0.05mm程度と見て良いかと。
 
いやー、どうしたもんかなぁ。 重量偏芯のない回転体で内外径圧入のベアリング支持だったら、 0.05mmあればダイジョブかもしれない。
でも内燃機関のクランクなので、 バリバリ重量偏芯してるうえに爆発の応力とか受けてタワむでしょ。 もう0.1mmはクリアランス欲しいなぁ....

クランクウェブ削りました。
ケースの内側を均一に削るのって難しいですから。
 
「クランクなんか削ってダイジョブなの?」ってのが大方の第一印象だと思います。
純正クランクと純正ピストンの組み合わせに限って言えば、 クランクウェブ加工でダイナミックバランスを崩しちゃいそうですが、 適応ピストンを限定してない社外クランクなんてそもそもダイナミックバランスなんか取れてるワケない。 純正クランクにボアアップピストン入れただけだってすでにバランス崩れてるじゃん。
元々バランスが取れてないんなら0.1mmくらいコスったからって大勢に影響ないでしょ。
 
と、少々無理やりな理由付けですが、 社外クランク自体が無理やりなアイテムなので今更細かいこと気にする必要なんかゼンゼンない。

ちなみに干渉して削るのはミッション側だけ、 (左右でバランスが....とか言わない) ジェネレータ側は鋳型からの抜き勾配の制約の妙で干渉なし。
 
 

クランクシャフトインストーラ

前のほうでヤマハのインストーラを買ったと書きました。

ところがコイツを家に帰ってよくよく見ると、 クランクを引く反力をケースで突っ張るような構造になってるんです。
 
「え?マジ、これじゃダメじゃん....」
というのも、理想のベアリングインストールとは「ベアリングボールと内外軌道輪に負荷を加えないこと」
 
クランク先端を引張っておきながらケースを突っ張ってしまっては、 クランクを引く推力がベアリングボールを通ってしまうため、 ボールと軌道輪に負荷を加えてしまいます。
 
「インストーラポットまで改造かよ....」と隔離病棟に書いたところ、 以前から知り合いだったシルビアさんから、 「ホンダのポットが理想形状ですよ」との情報が。
そういえばシルビアさんからだいぶ前にもこの話し聞いたなぁ。 ホンダのポットはケースじゃなくてベアリング内輪を突っ張る構造になってるので、 最初にケースにベアリングを圧入しておいて、 ポットでクランクを引けばボールに負荷を与えずにクランクインストールができるのだと。
 
後日、ホンダのインストーラを見せてくれました。
クランクを引張るスタッドと、スタッドに推力を与えるナット、 内輪を突っ張るカラーで構成されています。

スタッドとナットのセット。
スタッドの中心がクランク先端ネジを入れる雌ネジになっていて、 スタッド外側は逆ネジになっていて、 クランクを引くときのナットの締め込みでクランクとの結合が外れてしまうのを防いでいます。

カラーのほうはごく単純な形状。

Gアクのクランクにも問題無く適用できます。
 
このインストーラはスタッドとカラーでそれぞれ別手配が可能になっていて、 Gアクのクランク先端のM12ネジに適応するスタッドと、 外側カラーを購入すればGアク用クランクを引くことができます。 しかもヤマハのポットより安いそうです。
下記にシルビアさんから見せてもらったインストーラの型番を記します。シルビアさん、ありがとうございます。
 
M12用スタッド:07965-1660200
カラー:07965-GC70100
 
これから自分でインストーラを買ってクランクを入れようって人はホンダのインストーラを購入すると良いでしょう。
 
 
とは言え、ヤマハのポットだってベアリング内輪に届くカラーを追加してやれば、 ホンダのポットと同様に内輪引き仕様にすることができます。
隔離病棟にwestさんという方が「JOGのFホイールベアリングの外レースがちょうど良いですよ」 と情報をくれました。これまたありがとうございます。 これは「ランナーに」とのことですが、インストーラと係合するあたりはGアクもランナーもほぼ同じなので、 せいぜいワッシャの追加くらいでGアクにも使えると思います。
わたしの場合は自作の予定ですが、手元にこのレースがあれば、 すでにヤマハのポット買っちゃった人も理想構成のポットに更正可能ですね。

てなわけでカラー追加。
GアクもランナーもM12なので、M12用の駒を組んだ上でカラーを圧入する構造としました。
 
 

クランクベアリング圧入

まずは準備から。
ケースの合わせ面をオイルストーンでならして、脱脂、 ベアリング圧入穴にグリスを薄く塗布しておきます。

ダミーベアリングの圧入に使った治具を使って同じ要領で圧入します。
 
しかし、ダミーのように軽く圧入というわけにはいかず、 両方とも最初は斜めに入って止まってしまい、 一旦抜いてからもう一度やり直すことになりました。
一旦抜くときにボールで引くことになってしまいますが、 入りが浅くてポンと抜けたのでヨシとしました。
 
結局、治具を掛ける前にハンマーで外輪を叩いて、 2,3mmくらい真っ直ぐに入ったところで治具で圧入すると良いことが分かりました。
くれぐれも内輪を叩かないようにね。
 
 
※注)
なるべく叩かないのが正解。治具の改善で叩かなくても入るようになったので下記参照。
クランク交換:葛藤編、圧入工具の改善
 
 
 

クランク圧入

どっち(ミッション側かジェネレータ側か)から入れましょうか?
わたしが描いたシナリオは....
 
1).ミッション側を先に止まるまで圧入
2).合わせ目に液体ガスケットを薄く塗布
3).ジェネレータ側をケースが閉じる寸前まで圧入
4).ケース連結ボルトを入れて軽くトルクを掛ける
5).ジェネレータ側クランクをジワジワ引きながら、ボルトにもトルクを掛けて行って、 ボルトに規定トルクが掛かったところで、最後にクランクをチョビっと引いて終了。
 
5でボルトに規定トルクが掛かったところでは、 まだベアリングが入り切ってなくてクランクの回転が渋いはず。 そこから仕上げでクランクを微妙に引いてクランクの回転が軽くなったところでやめる。
ジェネレータ側を後にするのは、ケース連結ボルトがジェネレータ側から締めるようになっているため。 最後の微妙な作業は一方向から落ち付いて行いたかったからです。
 
よっしゃ、まずはミッション側から圧入だ。

インストーラポットの回転止めはフックスパナを使いました。 ポットのスリットにフックを掛けて。モンキーとか使ってるけど見逃してくれよぅ。

止まるまで引くだけなので腕力があれば問題ない。
 
 

さぁお約束、地獄の不測事態

4).までは問題無く進んだんですよ。
5).でボルトに規定トルクが掛かったところで、最後にクランクをチョビっと引いたんですが、 予想外に引きが軽くて引きすぎた。
回した瞬間「ズコッ」といったのでシマッタと思いましたが、後の祭。
引き過ぎで回転が渋いよ〜(泣)
 
仕方ないので泣く泣くセパレータでクランクを押して一旦ケースを離して、 もう1回最後のチョビッをやることに。
せっかくボールに負荷をかけないように作業してきたのに、 セパレータ噛ませたら意味無いじゃん(大泣)
 
泣いてもクランクは回らないので、セパレータで押すと....
ベアリングがクランク軸のほうについてきとる.... ベアリングがケースに残るかクランクに残るかは軸の出来次第ってことなのね....
こうなると内輪引き方式のインストーラは使えない。
全部やりなおしの予感を感じながらも、インストーラに圧入したカラーを抜いて、 ケースで突っ張ってクランクを引いて見ました。 これでクランクが軽く回るようになればボールを引いたことなんか忘れるつもりで。
 
ボールに負荷を掛けることを気にしなければ、クランクを両側からチョコチョコ引いてやれば、 どこかに回転が軽くなるポイントが出るはずなんですが....
出ねぇなぁ....元からこんなもんだったっけ?
親指と人差し指でクランクをつまんで回すとちゃんと回るんだけど、 なんか違うなぁ。セパレータで一瞬戻したときはもうちょっと軽かった気がするもん。
 
ダメだ、気になる所が残っちゃうとコレ以上進める気力が起きん.... 無理やり仕上げて後で割り直すより全バラになってる今やりなおしておいたほうが良いに決まってるしなぁ....
 
 
 
はぁ〜....最初からやりなおしか....
 
 
 

葛藤編へ続く

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