4VPシリンダー水冷化、その9:水冷エンジン完成

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その9:機械式ポンプ編へ
 
 
 

ラジエター移動

前回、後方配置ラジエター+機械式ポンプ編の最後で、 後ろからの風で水温が下がるという事実にショックを受け、 ラジエターを車両前面に移動することを柱とした改良を決意したのですが、 やろうやろう、と思っているうちに4ヶ月もの月日が流れてしまいました。
その間、ランナーを営業車にして仕事をこなしていたのですが、 そのランナーも小さなトラブルがポツポツ起きるようになり....
こういう小さなトラブルの頻発は大きなトラブルの前兆です。
やはり早いところランナーとGアクの2台体制を復活させないといけません。
 
実は、ここまでマゴマゴしていたのにはワケがあります。
ウチには前回まで使ってきたYZ250の左側ラジエターの他に、 車種不明のラウンドコアラジエターが、Gアク購入以前から転がっていたのです。
元々はFZR400に使うために解体屋で買ってきたものですが、 当のFZRはもう7,8年前に処分済みであり、ラジエターだけが使う予定も無く放置されていたのです。
 
使えるラジエターがひとつだけなら、何を迷うこともなく、 たった一つしかないラジエターを何とか付けるべく一心不乱に取付部品を製作しただろうと思うのですが、 なまじ他にも使えそうなラジエターがあると、どっちを使おうか逡巡しているうちに日が暮れてしまったりして....
 
と、言うのも、Gアク用に今回買ったYZのラジエターは取り付けに使える穴やサポートが、 ことごとく使いにくい形状をしており、結局全部のサポートを切除した上で、 ラジエターを微妙にベッチョリ保持するサポートフレームを作ったのですが、 それらはラジエターを車体後方に縦長に配置するためのサポート類であり、 ラジエターを車体前面に、それも横配置にするためには、 また新たにサポートプレートの製作が必要になりそうです。
 
それに対して、前出の車種不明ラジエターは元々750ccクラスのレーサーレプリカ用のものらしく、 車体前面に取り付けるのに適した位置に取り付けサポート類がポコポコ出ているんです。
 
純粋に、ラジエターを前に持ってくるための用品選択をするんなら、 取付条件に優れた車種不明ラジエターを選択することになるんですが、 「何のためにイチマンロクセンも出してYZのラジエターを買ったのか」 とか自問自答し始めると、案の定そのまま日が暮れちゃうワケなんですよ。
 
そうして、逡巡と日没を繰り返すまま4ヶ月が過ぎた、というのが真相なんです。
そんな中、この件を含む様々な問題をクリアするべく1ヶ月の長期休暇を摂らせていただきました。
休暇前に受注した物件の製作/発送も無事に終わり、 思い掛けなく丸二日の空き時間が出来たので、 朝からGアクを前にドーンと腰を降ろし、 今オレが、たった一つやるべきことは何なのか、 一旦頭の中を真っ白にして考えてみることができました。
 
1).取付条件
車種不明ラジエターは、車体前面(ステップスルー前部)に取り付けるために利用可能なステー類が豊富。
対してYZラジエターは新たにサポートフレームと取り付けプレートを製作する必要がある。
 
2).放熱容量
車種不明ラジエターは750ccクラスのものらしく、面積がYZ用の2.5倍近くある。
コアの厚さはYZ用のほうが厚いので、放熱容量は「不明:YZ=1.5:1」といった具合だが、 前回までで放熱に苦労しているだけに、少しでも放熱容量のありそうな車種不明ラジエターに魅力を感じがち。
 
3).ラジエター塗色
車種不明ラジエターは黒塗り
YZラジエターは塗装無しのアルミ地肌そのまま
放熱性能だけ考えれば塗装皮膜(樹脂皮膜)がないYZラジエターのほうが有利だが、 ラジエターをステップスルーに持ってくるとなると黒塗りのラジエターのほうが目立たなくて良い
 
4).費用の問題
既にYZラジエターを購入するに当たり1.6万を出費済み、 しかも「放熱容量が足りなかったら2個使う」とか言って2個買ってあったんです。
ここで安易に車種不明ラジに転向したら合計で3.2万が無駄になる。
とは言え、既に購入のために支払ってしまった代金は、 どっちを使おうが戻ってくるハズもなく....
つまり費用の問題は本来考えても仕方の無い問題であるワケで....
 
 
 
これらの条件を考え合わせると、YZのラジエターに固執することは無意味であり、 「前に持ってこよう」と決めた時点で黒塗りの大型ラウンドラジエターを採用するべきだったんだと思います。
それを4ヶ月も悩んでるフリをして問題を先送りしてただけなんですね。
 
よし、やることは決まった。
車種不明黒塗りラウンドラジエターを取り付ける方向で行こう!
 
 

暗くてよくわかりませんが、 フロントホイールハウジングから風が直で抜けてくるよう、 車体カバーを切除したところです。

通風孔ができたところにラジエターを取り付けてみたところ。
ラジエター上部にあったサポートをアルミブロックを介して、インナーカウルに固定しました。
 
このラジエターは「PC800」という荷札がついて解体屋で売っていたものだったのですが、 このPC800が車種に関する情報なのか、解体屋での事務作業のための情報なのか、全く分かりません。
 
 
配管に関しては、この車種不明ラジエターは入り口出口とも内径21mmホース用であり、 今まで15mmホースの使用を中心に考えて作ってきたニップル類は使えなくなりそうに思えたのですが、 YZラジの配管にも21⇔15変換ニップルを一箇所使っていたし、 フィラーキャップの接続に作った3方ニップルを15・15・21から15・21・21に繋ぎ替えるだけで、 意外に作り足すものもなくポンポンと循環配管が出来てしまいました。
3方ニップル用の21mmニップルは、2個あったほうがH.I.D.のサンプル写真として見栄えがよいと考え、 使用予定もないのに1個余計に作ってあったのでした。
ラッキーと言えばラッキー。
 
ASS の配管はより単純になりました。
今まで配管経路で一番高い位置にあったラジエター入り口にASS配管が必須だったのですが、 ラジエターがフィラーキャップより低い位置になったため、ラジエターへのASS接続が不要になり、 ASS配管はシリンダウォータージャケット行きのもの一つだけになりました。
これって、まさにランナーの冷却系そのものですよ。
 
 

シリンダ入水ニップルは元の上出しから逆Uの字状に下げてくることもできなくもないんですが、 ラジエタが車体前方に移った以上、この経路はラジエタに向いているべきであり、 シリンダのプラグ面に新たに穴をあけ直してニップルを移動、 元の穴は埋め戻しとなったワケなんですが、 これもYZラジエタの不要穴を塞ぐために作ったプラグがそのまま流用できてしまいました。
 
 
このニップル取付方向の変更で、今までエアが溜まりがちだった「ラジエタ→シリンダ」の配管は、 「一旦上がる配置」から「一旦下がる配置」になり、 エアが溜まらない構造になりました。
エアが残っていたとしても、シリンダーかラジエターに上がってくるし、 シリンダーに上がったエアはASSによってラジエターに強制送還されるので、 メイン循環系はある程度テキトーにエア抜きしても、 最初の走行で自動でエア抜きが完了する、というワケです。
 
 
 
 
結局、4ヶ月もチマチマ悩んでいた問題が、腰を落ち着けて考えることで丸二日(作業自体は一日)で作業完了してしまったワケで....
まぁ、一番肝心なのは「ちゃんと走るかどうか」であり、コレがダメなら「4ヶ月悩む」を繰り返す羽目になる可能性があるのですよねぇ....
 
 
 
 
 
 

始動性の問題、再び

ラジエター後方配置の時期にも悩まされたんですが、 エンジン始動の際に非常に苦労します。
 
まず一発では始動しません。
バッテリーが弱るまでセル始動を試みるも始動せずで、キックで継続するも始動せず。
プラグを外すと見事にカブッていて、バーナーでヌメりを飛ばしてようやくエンジンが掛かるんですが、 ちょっと油断してエンジンを止めてしまうと、「プラグ外す→バーナーで炙る→プラグ取り付けて再スタート」 の繰り返しになるんです。
技術的に未熟な水冷化工事のアオリでクランクケースに水が入ると、 その水分がプラグに掛かって始動不良になると考えていたんですが、 それだけでもないようです。
 
 

これはカブッて始動不能になった直後のプラグです。
液状の付着物があり、どう見ても火花は飛びそうにありませんが、 付着してる液体は水分ではなく、オイルみたいです。
 
後方配置ラジで燃焼室内にクーラントが入ったときは、 白い、油分と水分が高温高圧で重合を起こした俗に言うマヨネーズスラッジが付着していました。
 
付着物の正体はこの際置いておいて、 コイツをバーナーで飛ばしてしまえば始動可能なので、 始動不能になったらプラグを外してバーナーで炙る、 という基本ルーチンは変わらないのですが、 この頃からこの付着物の正体に関心を払うようになりました。
 
バーナーで炙る前にパーツクリーナーを吹くと、 クリーナーの溶液と瞬時に混ざり合って流れていくので、 主成分は油であるようです。
しかし、その後バーナーで炙ると若干パチパチとはじけるので、 水分を含んでいるのも確かのようです。
 
空冷だったころはプラグが油をかぶって始動不能になるなんてことはありませんでした。
水冷にすることで油分をかぶりやすくなるなんてことがあるんでしょうか?
水冷化のせいで、というよりは、水冷化に伴って変更した箇所に起因してるのでは?
そんな疑念が生じたのですが、この時はクランクケースの中に溜まった油がプラグに掛かったのだろう、 くらいに軽く考え、プラグに付着したスラッジをバーナーで飛ばして、 取り敢えずエンジンを始動することを最優先としていました。
 
 
ラジエターを前方配置にして最初の始動の際も火が入る気配も無くて 「4ヶ月も放置していたのだからキャブレターのオーバーホールくらい必要かな」 と思い、キャブを外して完全分解して清掃、再組み立てして始動に臨んだのですが、 やっぱり始動しなくてプラグを見たらベッチョリ。
「こりゃ、バーナーで炙って始動したら、しばらくはエンジン止めないように注意しなきゃイカンな」 と思い直し、住宅街からちょっと離れた国道脇のスペースに落ち着いて、 「プラグ炙る→プラグ取付→エンジン始動→安定するまでブリッピング」 を敢行しました。
 
いや〜、やっとエンジンが回り始めましたが、すごい煙です。
クランクケースに冷却水が混入したときの煙は主成分が水蒸気なので、 マフラーから大気中に放出された直後に大気に吸収されて消失しますが、 今発生してる煙は車体周辺に紫色の空間を作り出して、 しばらく消える気配がありません。
このまま放っておくとプリンスが来ちゃうよ、ってくらい紫色の空間です。
 
つまり、これってオイルが燃えてできる煙なんですよね。
ヤマハの2stオイルはキレイに燃えて煙を出さない、というのが売り文句なんですが、 あまりにオイル量が多ければ、燃え残って煙になるのも無理は無いと思うんです。
 
ブリッピングで紫煙が少なくなってきたところでスロットルを戻すと、 回転は若干低めながらもアイドリングをしています。
アイドルスクリューを締め込んでアイドリングを上げて、試走に臨みます。
 
 

ラジエター位置変更、試走第一回目

エンジン始動前の水温は24℃でした。
この日は6月後半で予想最高気温が26℃というコンディションでしたが、 試走が午前中だったので、開始時の水温=周囲の気温だったのだろうと思います。
 
 

試走開始から15分ほど経過したころの水温。
すごい、40℃台後半で落ち着いてます。
 
 
冷却系の性能は予想以上に良好のようなので、道端に車両を止めて、各部の写真を撮ることにしました。
写真撮影の間、エンジンが止まって始動できなくなるとヤッカイなのでアイドリングさせたままです。
 
 
 
 
 
 

アウトライン撮影

これが変更後のフロント周りです。
ラジエターは最上部のサポートだけで固定されてますが、 上下の冷却水ホースで拘束されるので、 特に走行中に暴れるということもないようです。
フィラーキャップも固定されてないのですが、 同様に暴れることなくこの位置で走行時の振動をクリアします。
 
とは言え、上記2点はヒマを見てちゃんと固定しておこうと思います。

カウル類を大幅に切除して、ラジエターへの通気を確保したので、 タイヤハウスからラジエターのスリットを通して曇り空がチラチラと見えます。

ラジエターへの通気を確保するためにカットした部分が分かると思います。

ウォーターポンプインペラハウジングと、 ASSサクション付近です。
循環経路組立時に、大きな気泡はホースを動かしてフィラーキャップから排出しましたが、 ASS配管内にはたんまり気泡が残った状態でエンジンを始動しました。
でもエンジン始動後はすっかり気泡が消えてASS配管はクーラントで満たされています。
 
 
こうしてアイドリングさせたまま写真を撮ってると、 ラジエターに走行風が当たらないのでどんどん水温が上昇してきます。
 
 
 
 
 
 

放熱性能

10分くらいアイドリングさせていたら65℃まで水温が上昇しました。

そこから走行を再開して、6分ほど走行すると49℃台まで水温が下がります。
 
周囲温度24〜26℃で水温50℃、温度差約25℃で抑える冷却系ってのは、 性能としては十分過ぎるものだと思います。 恐らく冬はラジエターの大部分を被覆しないとマトモに走らないでしょう。
まぁ、ヤマハの水冷2st車は冬はラジエターにガムテがデフォルトですから(笑)
 
 
 
「ラジエターを後ろに持ってくるとスッキリするんじゃね?」みたいなノリで始めた水冷化工事でしたが、 1年以上掛けて結局、大容量ラジエターをオーソドックスな位置である車両前面に配置するという結果になりました。
モーターサイクルってのは歴史の古い機械ですから、奇をてらった改造手法はそうそう成功しない、 という鉄則を時間と金をかけてまたひとつ実証しちゃいましたね(泣)
 
とは言うものの、「ダメだよ、だって常識じゃん」なんて言われたって、 なんでそんな常識が生まれたのかを確かめてみないと気が済まない損な性分ですから....
これからも「ダメ」といわれたことをワザワザ実行する姿勢を貫きますよ。
 
 
 

それとショボイ不満。
ビール横置きができなくなりました。
 
また当然のことながら、信号停止の後に走り出すとモワァ〜ッと生暖かい空気がオレめがけて上がってきます。
 
 
 
 

始動不良について、考察

エンジン始動時、白煙モウモウの中でアイドリングを安定させるために、 だいぶアイドルスクリューを締め込みました。
その時点ではだいたい1500r.p.m.くらいでアイドリングしていたのですが、 走行を続けているうちにアイドリング回転数が高くなってきて、 何度かに分けてアイドルスクリューを回し戻しました。
 
また、走行開始直後は特に低回転領域で「バビッ、バビッ」と着火不良が起きているような回り方だったのですが、 アイドリング回転の上昇とともに着火不良も少なくなって行きました。
 
これって、クランクケースに溜まっていた不純物が走行と共に飛んでいって、 プラグへの付着が減ってきたので、火花がよく飛ぶようになり、回転が安定、 アイドリングも無理なくできるようになってきた、ってことなんじゃないでしょうか。
ヘッドが暖まることでも同じ経緯が観察されますが、 エンジン始動から1時間近く回転不安定が出続けていたので、 ヘッド温度はあまり関係ないように思います。
 
 
4ヶ月の放置期間中、車両の左下にオイル垂れが成長し続けているのが気になっていました。
てっきりクランクシャフトのオイルシールが抜けて、 ミッションケース内部からオイルが垂れて来ていると思っていたのですが、 ミッションケースを開けてみるとどこにもオイルが流れた形跡がありません。
 
「じゃ、どこから垂れたんだ?」
よくよく観察すると、エアクリーナー下部の透明なチューブの先端から垂れているのが分かりました。
このチューブの先端は熱でツブして塞いであるのですが、 オレは吹き返しのオイルが溜まらないようにツブした先端を小さくカットしてあるんです。
車両が頻繁に運転状態にあるなら吹き返しのオイルがエアクリーナー内部に溜まり、 チューブ先端から垂れてきても不思議はないのですが、 4ヶ月の放置期間中にもオイルが垂れ続けていたというところが引っ掛ります。
 
もしかして、オイルラインからオイルが滲み続けていたんじゃないでしょうか?
「なぜ運転していないのにオイルが出るの?」それはオイルタンクをメットイン内部に移動させ、 タンク位置が高くなったため、オイルポンプに油圧が常に掛かった状態にあったためじゃないかな?
だとすると、スロットルバルブ横に開口してるオイル吹き出し口から、 分水嶺を水が分け下るようにエアクリーナーとクランクケースにオイルが流れて行き、 エアクリーナーに流れた分は透明チューブから車体下に垂れ、 クランクケースに流れた分はケース内部に留置され、エンジン始動の際に混合気に混ざって燃焼室へ飛び、 プラグに付着して始動不良を招いた、という可能性が考えられます。
 
多くの2st車両のオイルラインには、どこかしらに小さなチェックバルブが入ってますが、 あれってオイルの自然落下の圧力を止めるものなのかな?
現在Gアクで使っているデロルトキャブにも純正キャブのニップルからチェックバルブを移植して付けてますが、 これはあくまで純正位置のオイルタンクからの圧力を止める程度のものであり、 純正位置より高くなったオイルタンク油面圧を止める力は無く、 オイルニップルからジワジワとオイルが漏れていたのかもしれません。
 
 
冷却系が不完全で水温が高めだった頃は始動不良の原因はケースに入った水だったのだろうと思います。
平均水温が下がり、ケース内への冷却水ブローの危険が減った今、 新たな可能性として浮上した「オイル漏れ」も排除しておくことにしました。
 
Gアクは2型以降、オイルポンプからキャブの間に小さなチェックバルブが入ります。 これが空気圧で動作チェックしてみると意外なくらい動作圧が高いんです。
2型以降はキャブのニップルにもバルブがあるかどうか未確認ですが、 この途中設置型のチェックバルブはたまたま手持ちがあったので、 これを水冷Gアクのオイルラインに挿入することにしました。
 
これで始動不良が減ればよいですが。
 
 

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