4VPシリンダー水冷化、その8:機械式ウォーターポンプ

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その7:試走編・第三回目へ
 
 
 
なかなか水温が下がりません。
 
全体的に問題があるのは明らかですが、 一つ一つ片付けていかないと何が原因なのか分かんなくなっちゃうし、 いっぺんに用品を揃える財力もないからさ....
 
で、水漏れするは、吐出はショボイは、デバイス単体で一番問題の多いポンプから変更することにしました。  
 
 

ポンプ選定

隔離病棟に10♪さんという方が遊びに来て、「KNさんのほうがましなんですかな?」と書いていかれたんです。
オレにしてみれば「え?KNってポンプも売ってるの?」って感じだったんですよ。
 
さっそく KN企画 のページに行ってみましたよ。  
ホントだ、青いアルミボディのウォーターポンプがあるよ。\8,900かぁ。
そんで、その下に機械式のウォーターポンプなんてのもあるんです。 「JOG50,90系の横型エンジン」用ってなってるんですが、これってGアクにも付きそうな気がするんです。
ヤマハの横型エンジンってオイルポンプとかリードバルブとか、 90と100で寸法が同じ部分が色々あるんです。 エンジンの心臓部であるシリンダー辺りは当然互換性がありませんが、 送風装置の周りなんかも多分共通なんじゃないかな?
送風ファン周りの寸法が共通ならば、ファンカバーを取り付ける穴位置も共通、 ということはファンカバーを取り付ける穴を使って取り付ける機械式ポンプも取り付けることができる。
ファンとファンカバーってのは位置関係を崩すと送風性能が変わっちゃうので、 ファンカバー形状に互換性があるなら、 ファンカバーとクランク軸の位置関係にも互換性があることが予想されます。
だけど、\12,900もするとなると「付くかも」くらいの動機でポチるワケにもいかないなぁ。
候補の一つにしておきましょう。
 
 
 
それとベンツのヒーターポンプ。
かなり以前、mayakoさんという知り合いが、「ベンツのヒーターポンプで水冷やりたいなぁ」と言ってたり、 manabuさんという方がランナーのウォーターポンプを電動化したときに使ったポンプが、 横浜のほうのベンツ屋さんで買えるとか聞いたことがあるのよ。
どうもベンツのウォーターポンプのウワサは水冷スクーターを作ろうとするとチョクチョク耳にします。
Haruさんも「ヤフオクで安く手に入るんぢゃないかなぁ〜」というので調べてみたら、 新品だと\26,000くらいのようで、きったない中古だと\1,000なんてのもありました。
2.6万はさすがに出せないし、\1,000のやつはあまりにも汚かったのでこれに決めるということはできませんでした。
 
 
 
そんなこんなで新年の恒例行事みたいになってるHaruさんのoffに集まったみなさんに 「KNの50/90用機械式ポンプって100(4VP)に付きそうな気がするんですよねぇ」とお話ししたら、 AeroX50ベースでSS車両を作ってる YOSSIさん が、「ウチにミナレリのポンプと4VPのクランクケースあるから、ちょっと付けてみましょうか?」と言うので、 「お願いします」と、その報告を待ってみることにしました。
先のKNの機械式ポンプが「50,90用」となっていたってことは、 少なくとも50と90はここらへんの互換性があるってことだし、 50用のミナレリ(ヨーロッパヤマハ用の水冷50ccエンジン)ポンプが100に付くのであればKNの機械式ポンプも100に付く、 ってことになります。
 
そしてその日の夜、YOSSIさんから添付ファイル付のメールが届きました。
結論、「付きます、穴位置が1個ずれるだけ・・・長穴でオッケーぃ!」とのことでした。
うぉ〜、やったぁ!
 

これはミナレリのポンプを4VPのケースに取り付けた写真です。
外周はピッタリフィットしてるし、3箇所のボルト穴のうち2箇所は完全互換です。
(画像提供:YOSSIさん)
 
 

その、合ってない1箇所のアップ。
なるほど、穴をヤスリでひきずってやれば問題なくボルトが入りそうです。
(画像提供:YOSSIさん)
 
 

ポンプハウジング内側から撮影したショット。
クランク軸とポンプ軸も合ってそうです。
(画像提供:YOSSIさん)
 
 

エンジン正面からのショット。
(画像提供:YOSSIさん)
 
 

ミナレリエンジンのローター部。
ローターに立てたピンでポンプを駆動するんですね。
(画像提供:YOSSIさん)
 
 

KNのページでポンプといっしょに写ってたピンがこの駆動ピンだったのか。
ゴムブッシュも写ってたので、あのポンプを買えば必要な用品は一通り揃いそうです。
(画像提供:YOSSIさん)
 
 
 
YOSSIさん、画像ありがとー\(^o^)/
 
 
さぁ〜、ここまで情報が揃えばもう迷うことはないですよね。
穴の3箇所のうち2箇所使えるってことは、四十捨五十入すれば100%互換性ありってことだし、 合わない1箇所だってYOSSIさんのいう通り長穴にしてしまえばモーマンタイ。
 
よっしゃ!ポチるぜぇー!
翌日早朝、たまたま早く起きたので仕事のメールの処理とかを済ませ、 KNのページに行って代引き発送のボタンをポチっとな。
うひょぉ〜〜〜〜、買っちまったぁ〜〜〜〜(笑)
 
 
 

機械式ポンプ

ポチの翌々日、クロネコさんがポンプを持ってきました。
 
 
KNのページに情報がないのでメーカーとかは分かりませんが台湾製でしょうね。
プラスチックかと思ってたけど、アルミ鋳造でカーボン柄の塗装が施された製品でした。
 
早速車体に当ててみましたが、YOSSIさんが「長穴にすれば」って言ってた穴が既に長穴になってます。
つまり取り付け穴は全部合うんです。
 

ポンプAssyを車体に取り付けた様子です。
違和感ないっすね。
 
 

ポンプ軸とクランク軸が合ってるかどうか見てみました。
インペラを抜いて、その穴からクランク軸中心がちゃんと見えるかどうか.... Good!
 
 
 
でも、甘い話ばかりじゃなくて....
ローターに駆動ピンとゴムブッシュを取り付けてポンプAssyを取り付けてみると、 ブッシュがドリブンホイールに全然届いてません(笑)
まぁ、KNのページに「50,90用」ってバーンと書いてあるんだからタダじゃ付かねえだろうなとは思ってましたよ。 つっても、駆動ピンを延長して造り直してやればイイだけだからね。
 
どれくらい延長したら良いか調べようとしたんですが、 ポンプAssyを被せてしまうと隙間の測定ができません。 エンジンのCADデータにポンプの形状を入力して、 足りない寸法を把握することにしました。
 
 

ローター側の駆動ピンと、 ポンプドリブンホイールとの高さの差は分かったんだけど、 別に気になることが出てきたんですよね....
 
駆動ピンとドリブンホイール穴の中心が合ってない。図面上で0.5mmずれてます。
 
 
「ホントかな?」と思い、ドリブンホイールをGアクのローターに当ててみました。
 
 

ローターに駆動ピンとゴムブッシュを取り付けて、 ドリブンホイールをハメてみましたが、 確かにキツくてなかなか入りません。
オレの持ってるデータだと、100のローターも90のローターも駆動ピンが入る穴のピッチって同じなんだよな。 このポンプってホントに90に使えるんかな?
 
 
無理やり押し込めば上の写真みたいになんとか入るんですが、 ここの噛み合わせって、ローターとポンプの芯ズレを吸収するために、 ある程度のクリアランスというか柔軟性が必要なハズ。
無理やり押し込んでガチガチに固定された状態じゃ、 ローターとポンプが芯ズレを残したまま回ってしまうので、 弱いほうのポンプのドリブンホイールか中心のベアリングが壊れちゃうと思うんだよな。
なにしろエンジンの回転で強引に回されちゃうのが機械式ポンプの宿命だからさ。
 
 
どうしたもんかな....
駆動ピンは延長して造り直すので、ゴムブッシュが入るところを1mm細くして作れば0.5mmのズレを吸収することができるけど、 ゴムブッシュとピンがガバガバってのはブッシュの傷みが激しくなる気がする。 面圧的に考えれば直径が大きいところをガバガバにしたほうが持ちが良い....
ドリブンホイールの穴を広げるか....
 
 
ドリブンホイールをボール盤に固定、 このとき、簡単な冶具を作って穴の中心とボール盤の主軸中心をセンタリングして固定しました。
 
6箇所ある穴(元径15.5mm)の3箇所を16mmに、残り3箇所を17mmに拡大。
16mm穴を使ってローターとドリブンホイールを組み合わせるとやっぱりまだキツい。
17mm穴のほうはスポッと入って“コトコト”と若干のクリアランスもあります。
よし、この17mmに拡大したほうの穴を使うことにしよう。
 
 

ローターに取り付ける駆動ピンは、 M6のボルトと、ディスタンスカラーを兼ねた高ナットで構成することにしました。
ボルトはブッシュが当たる部分がネジになっててはまずいので、 全ネジじゃないボルトの先端を切って長さを合わせた物を使います。
 
 

New駆動ピンをローターに取り付けるとこんな感じ。
 
 

ポンプAssyを組み立てて、車体に取り付け、 ポンプインペラを指で動かしてみると「コトコト」とクリアランスを確認することができます。
点火プラグを外して、セルを回して写真を撮ってみました。
 
 
 
 

ポンプ小改良

1).インペラ軸ベアリング交換
ポンプAssy単体でポンプのドリブンホイールを手で回してみると、なんかカチカチ引っ掛かるんですよね。 インペラを抜いてベアリングの回転を確認してみたところ、2個あるベアリングのうち、 インペラ側のベアリングが異物を噛んでいるように回転の引っ掛かりがあります。
いつも行く秋葉原のベアリング屋さんで“608V”というベアリングを買ってきました。一個\260でした。
 
2).オーリング溝修正
オーリング溝に塗料の塊が付いたまま固まってました。 でもって、その塊りにツブされてオーリングのその部分が変形してて....
この塗料の塊をマイナスドライバでコジって除去、水漏れが起きないよう溝の中をキレイにならしておきました。
 
3).インペラハウジング接合面修正

インペラハウジングの下面、ポンプ筐体との接合面に、 鋳造の湯口跡がそのまま残ってます。
ここは耐水ペーパーと板ガラスで面研して平らにしておきました。
 
4).インペラ軸シールシング
ここのシールシングはリップ形なのは良いんだけど、リップがベアリング側にしかなくて、 循環系の内圧が高くなったときに冷却水がそのまま漏れてきそう。
しかし良い代替品が見つからなかったので、取り敢えずこのシールのまま実走することにしました。
 
 
 

Active Suction System(ASS)

ウチのもう一台のモルモットであるGIRELA RUNNERの水冷エンジンは、 ヘッドカバーの一番高いところに小さなニップルが生えていて、 そことウォーターポンプの出口付近が細い配管でつながれているんです。
 
今までは「この配管、何だろうなぁ....」と、傍観者モードで意識していたのですが、 自分で水冷エンジンを作り始めて、ようやくこの配管の機能が分かってきたんです。
これはヘッドカバー(=ウォータージャケット)からエアを吸いだす配管じゃないかな?
流れのある管(冷却水メイン流路)に細い管を取り付けると、メイン水流との合流点に負圧が生じます。 この負圧とヘッドカバー上部を結ぶことにより、この細い管の中には常にヘッドカバーからポンプ出口へ向かう流れができます。
ここで、例えばウォータージャケット組立直後の残留エアとか、 一時的な高温状態で発生した水蒸気とかでウォータージャケット内にエアがあった場合、 細い配管の吸い込み口がウォータージャケットの比較的高い位置にあれば、 メイン水流による負圧でエアが吸い出されるでしょう。
ランナーの場合、吸い出されたエアはラジエターに向けて排出され、 ラジエターの一番高い位置に接続されているリザーバータンクにポコポコと上がってくるはずです。
 
このシステムをGアクにも導入すれば、アップダウンが激しくエアが溜まりやすい循環系の改善になるかもしれません。
これをActive Suction System(ASS)と名づけることにしました。

インペラハウジングの入路中心にニップルを立てるクボミを掘ります。

この穴に裏側からステンレスの圧入ナットを取り付けて、 サクションノズルを受け入れる構造とします。
 
 
ここに、中心に流路を作ったボルト兼サクションノズルを差して、ニップルを付けるスイベルを設置する。
インペラが作る水流の中心にサクションノズルが開口する構成にしたので、 吸出し負圧は最大のものが得られるはずです。
 
 

最大で3個のニップルを接続できる形状にしてあります。
設置当初は後方配置ラジエターの一番高い部位に接続するルートと、 シリンダーのウォータージャケットの頂部に接続するルートとで合計2個のニップルを使っていました。
 
ニップルはキタコのコンビニパーツの「内径5mmホース用ステンレスニップル」というのを使いました。
型番:0900-990-90006、一個\800でした。

ASS配管のラジエター側の接続です。
ラジエター上部に付けたエア抜きニップルに接続しても良かったのですが、 メイン配管のエアもよく抜けるように、接続エルボーの頂点にニップルをたててみました。
 
ちなみにエルボーに圧力計が付いてますが、 メイン循環系のホース自体がフニフニのプニプニなので、 全く圧力が掛からず無用なアイテムとなってました。
 
 
 
 

機械式ポンプ、試走第一回目

冬だったので気温は10℃くらいだったでしょうか。
いつものコースを走り始めると着々と水温が上昇し始めます。
 
 

20分ほどの走行で、あっという間に90℃に達してしまいました。
ところが、前回までの亀ポンと違って、90℃で安定してます。
亀ポンはここから更に水温が上昇して、100℃で沸騰してGameOverになってましたから。
 
ちょうど同じ時期に機械式ポンプをBw's100に導入されたという ジュンさん という方も 「水温も電動式ポンプに比べて明らかに下がりやすく、とても良い感じでした」とのことで、 水温を下げるためには流量UPは効果が大きいようです。
 
 

試走第二回目、リアフェンダー外す

ラジエターの前に取り付けたフェンダーを外すと水温に変化は出るでしょうか?
 
う〜ん、5℃下がりました(泣)
この季節で85℃じゃ夏になったら走れません、つーか春まで持たんジャロ。
 

ASSの効果は?

水温低下への貢献は残念ながら確認できませんが、 「エアを吸いだす」という機能に関しては上々のようです。
 

これがエンジン停止時のASS配管。
ASSの細い管に一部エアが溜まってます。

エンジンを始動してASSが機能し始めるとエアがASSサクションに向かって下って行きます。
 
 
この日は約10kmの走行でしたが、安定水温は85℃以下にはなりませんでした。
配管内に発生するエアを自動排出するASSを設置しましたが、 走行が終わってみるとラジエターからシリンダーに向かう配管の最高部にだいぶエアが溜まっています。
メイン配管の途中に高い部分があるとそこにエアが溜まってしまい、その部分にASSが接続されていないと意味がないようです。
車体後方にラジエターを持ってくると、タイヤをかわしたり配管をカウル内に収めたりする都合上、 何箇所か高い部分ができてしまいます。
後方配置のラジエターでは、単純でアップダウンの少ない循環系を作るには無理がありますね。
 
機械式ポンプのちょっと面白い特徴が分かったのですが、スロットル開度を抑えて低回転で流し走行をするより、 バンバンスロットルをアオって回転を上げ気味で走ったほうが水温が下がりやすいのです。
機械式ポンプはクランクと同軸なので、回転が上がると流量が増えて放熱しやすいようです。
 
 
 
 
 
 

機械式ポンプ、試走第三回目

翌日、配管に溜まったエアを取り除いてから三回目の試走に出ました。
やはり水温は85℃くらいです。
 
そして走行開始から5,6km、中原街道丸子橋で70km/hくらいで走行していたところ、 橋を渡りきって200mくらいのところで「モ゛ー、ケチョン」と止まってしましました。
そう、焼き付き(抱き付き)です(泣)
 
原因は何でしょうか?
水温が高めだったのは間違いないですが、85℃で安定していたのでこの状態で焼き付くというのは不自然。
シリンダ組立時にオイルラインに気泡があったのを覚えてるんですが、 今までも時々気泡を残したまま走行したことがあったけど、エンジン温度が上昇してオイルの粘度が下がると、 気泡がオイルタンクのほうへ上がっていくことが多かったので、これも即原因とは考えにくい....
 
再始動が可能だったので、そのまま試走を続行しました。
このシリンダーは水冷のイロハを学ぶためのイケニエと考え、燃え尽きるまで酷使することにしましょう。
 
水温は抱き付きを境に95℃くらいまで上昇するようになってしまいました。
それでも沸騰に達する兆しはないので、丸子橋から荏原→環七→駒留→R246と、 約30kmを走りきり、なんとか自宅まで自走で帰還することができました。
 
「バイク押して歩け歩け会」の一員であるオレの改造において、 自走で帰ってこれたってのは第一段階成功と考えられなくもありません....
 
 
 
 
 
 

ラジエター配置変更の予感

しかしその翌日、ちょっとした用事を済ませに走りに出た時です。
 
前方の信号が赤だったので停止線で止まったんですが、 後ろから風がビューッと吹き、 その瞬間水温計の表示がパタパタと5℃くらい下がったのです!
 
今の冷却系の構成では、いくら高速巡航しても水温が5℃も下がることはありません。
それが後ろから風が吹いただけで5℃下がるってことは、 いかに今の位置のラジエターに風が当たってないかということを如実に表しています。
 
....やっぱ後方配置はダメなのか....
 
「走行する車体が押しのけた空気は車体後方で収束する」と考え、ある程度は風が当たるだろうと思っていたのですが、 思った以上にスリップストリーム領域が長かったようで、 マッタリとヨドんだ空気の渦の中でラジエターは窒息状態だったんでしょうね。
 
 
仕方が無い、ラジエターは前に持ってきましょう。
今の状態(循環系にアップダウンがある状態)でラジエターだけ横に出してみたり、 とか、色々悪あがきをしてみようと思っていたのですが、 その間ランナー1台だけで生活するというのはかなりコワイ。
なるべく早く通常使用ができるレベルまで仕上げるために、 冷却性能の優れたランナーとほぼ同じ配置の循環系にしてみましょう。
 
 

水冷エンジン完成編に続く

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