4VPシリンダー水冷化、その3:シリンダー組み立て編

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シリンダー、ラジエター、ポンプ、ON/OFFスイッチ、リザーバータンク....
 
デバイスは一通り揃った。多分。
いよいよシリンダーを組みます。
 
 
 

床板取り付け

あぁ〜、とうとうこの日が来た。
シリンダーにウォータージャケット床板を取り付けるため液ガスを塗ります。

そして床板を乗せて固定ボルトを締め込む。
床板とシリンダーの合わせ目から液ガスがニチーッとはみ出してきます。

当然排気ポートの天井の合わせ目からもニチーッと。
 
 
 
キリの良いところで一旦仕事に戻って液ガスがある程度固まるのを待ちます。
夕方からシリンダーの仮組みにかかります。
 
 
 

シリンダ仮組

作業再開。
まだピストンは入ってませんが、 スタッドナットを締め込んで点火プラグを入れてプラグにもトルクを掛けます。
 
この状態でヘッドを取り外してプラグのアースフックの開き位置を記録します。
ヘッドの頭の6箇所のネジ穴の付近に数字ポンチで1〜6まで打刻しておいて、 例えば2と3の間にフックの開きがある場合は「2.5」みたいに紙に書いておく、と。
マジックとかだとパーツクリーナーの一発で落ちちゃうので。
 
さて、上の写真で分かる通り、スタッドがずいぶん飛び出てます。
ヘッドの締め付け面は機械的に必要な高さしか与えてないので、 元から付いてるスタッドは余り気味で、 かろうじて普通のナット用10mmソケットが入るのですが、 ちゃんと締め付けるためにディープソケットが必要かな?と思いました。
明日にでも買ってきましょうか。
 
 
 
 

本組み立て&問題噴出

翌日、いよいよピストンを組んで内燃系を完成させます。
図面上で検討に検討を重ねて作った完璧なエンジンのはず だったんですが....
 
 
シリンダ内面やピストン表面、それにピストンリング溝とかにオイル(ZOIL)を塗布、 コンロッドにピストンを組み付けて、シリンダを挿入して、 ジェネレータローターを回してみると「ゴギッ」といってシリンダーが少し動きました。
 
そうだ、ロングストローククランクってシリンダスカートが当たるんだ、忘れてました。
「オレってオッチョコチョイだな、テヘッ」
とか言いながら、シリンダを取り外してスカートの角をヤスリで落とします。
削り量は先の55mmシリンダ に準じました。
 
 
削り終わったらシリンダー全体をパーツクリーナーで洗浄、 再度それぞれのパーツをオイルでベットベトにしてからクランクケースに取り付けます。
 
そしてローターを回してみたんですが、またしても「ゴギッ」とクランクが止まりました。
 

「おっかしぃなぁ〜、シリンダ角取りが足りなかったのかなぁ〜」
とか言ってシリンダを取り外して、クランクに当たりそうな角を再度ヤスリで落とし直します。
「54mmになるんだから、55mmよりも余計に削らないとね」とか自己欺瞞しながら。
 
 
そして、「よっしゃ、今度こそ」と洗浄→オイル塗布→組み立て、 と進んでクランクを回すと、さっきと同じようなところでやっぱり回らなくなるんですよ。 しかもシリンダスカートが当たるだけならシリンダをチョコッと持ち上げればクランクは回るはずなのに、 当たったが最後ピクリとも回らないんです。
ここでやっと「今度はシリンダじゃないのかな?」と思いました。
で、シリンダを抜いてピストンだけでクランクを回してみたら、 下死点でピストンスカートとクランクウェブがガッツリ当たってるんですよ。
「なんだよ、ピストンもかよ!」
速攻、ピストンを外してスカートをヤスリで整形。
整形し終わったピストンをパーツクリーナーで洗浄し、オイルを塗布、コンロッドに取り付けて、クランクを回して干渉がないことを確認。
シリンダを挿入し、手でクランクを回すとピストンの頭がシリンダーからヒョコヒョコと飛び出して、 やっとちゃんと回るようになりました。
 
でもそこで終わらないのがオレの改造。
ヘッドを付けてナットを仮組み、手でクランクを回すとやっぱり「ガチッ」って言って止まるんです。
ヘッドを付けたら回らなくなったんだから、今度の原因はヘッドですよね。 ナットを外して手でヘッドを押さえながらクランクを回してみると、 ピストンが上死点に来たところで「ビョコッ」っとヘッドブロックを押し上げてるんです。
「スキッシュが低すぎたのかな?」と思いシリンダベースガスケットを1枚余計に入れて組んでみたんだけど症状は変わらず。 しかもスキッシュが足りなくて干渉してるって按配じゃなくて、2mmくらい動いてる。
不審に思ってヘッドを外してスキッシュ内径を測ったら53.5mm。
ピストンはこれまで切々と語ってきた通り54mmですよ。
ロングストローククランク化に伴って発生するオーバーストロークの吸収のために、 多めに彫り込んだスキッシュの中にピストンの頭を追い込む構成になってるのに、 ピストンの頭よりスキッシュが小さかった日にはピストン入らないじゃん。 つーか、どこから53.5mmなんて数字が出てきたんだよ。
....って、何のことは無いケアレスミスですね。
何だかなぁ〜、自分の部品の加工って、気がゆるむのかなぁ....
 
「三冠かよ!」(シリンダ&ピストン&ヘッド♪)
と一人でツッコミを入れつつ、 早速スキッシュを掘り直す段取りをして、スキッシュ径を54.5mmに広げます。
今日何度目の洗浄→オイル塗布→再組み付けだろう....
 
ヘッドのスキッシュ拡大でやっとクランクが一回転するようになりました(泣)
クランクが一回転するようになればエンジンとして組み立てが可能になります(泣泣)
 
彫り終わったヘッドを洗浄して取り付け、やっとエンジンが組み上がりました。
取り敢えず、この日は疲れたのでここで作業終了、次回に持ち越すことにしました。
 
 
そして二日後、
さぁ、ナットにトルク掛けるために点火プラグ入れてクランキングしましょうねぇ〜!
アレッ?セルもキックも異常に重たいよ(汗
おかしいなぁ〜、圧縮圧力測ってみようか。
 

あんじゃ、ごりゃぁ!
1.3MPaって、異常燃焼するくらいの高圧縮だよ!
 
 
 
えぇ〜ん、シクシク、もうイヤや〜(泣)
 
ヘッドの容積はオーバーストローク吸収分を除いて12.5ccになるように作りました。
12.5ccっていうとノーマル4VPヘッドと同じ容積で、 ボアが54mmに広がったとしてもそんなに小さな燃焼室ってワケでもない....
削り終わったときに容積を測ってるので作り間違いってことはないはずですが、 これまでがこれまでなので、もう一回ヘッド容積を測り直してみました。 でも今度は間違ってなくて、オーバーストローク吸収分と合わせて17.2ccでした。
 
そういえばロングストローク化後最初のシリンダとなった55mmのときは、 最終的にヘッド容積は15.5ccにもなったんですよね。
考えてみれば今回のヘッドの容積を12.5ccに決めたときは、 昔昔のT's54mmの感覚を思い浮かべながらノリで決めたような気がするなぁ。
T's54mmと違うのはロングストローククランク。 ストロークが増えてるんだから排気量も増えてるので、 過去のデータを参照するにしても排気量に対する比から計算するべきでした。
 
それに用品製作編で「スキッシュ角度をカメピストンに合わせて14.5度に変更しました」なんて得意げに書いたけど、 ピストンクラウンの角度が11度から14.5度になったってことは、 ピストンの盛り上がりが大きくなってるわけだから、 スキッシュ内でピストンクラウンが占める容積が増えて、 結果として燃焼室として使われる容積が狭くなるので圧縮も上りがちになる。
ピストンが変わったら圧縮までいっしょに変わっちゃった、 てのは今まで色んなところで聞いてたハズなのに....
 
難しいや....
とにかく1.3MPaもあっちゃまともに走らないのでヘッドはもう一回彫り直しが必要です。
まぁ、緩すぎた日には作り直しになったかもしれないので、 彫り直しで済んだだけでも見っけもん(笑泣)
 
参ったなー、作業場から事務部屋に移動してPCを起動、ヘッド形状の見直しです。
燃焼室の直径はこれ以上広げたくなかったので、 プラグが飛び出しすぎない程度に追加で燃焼室天井を押し上げられる形状を出してみたら+2cc程度。 とりあえず2cc増やした状態で圧縮を測ってみて、 まだ高いようだったらこの日の作業は中断して、 一旦仕切り直すことにしました。
 

2cc増やしたヘッドを取り付けて圧縮を測ってみました。
1.15か....
チャンバー装着を前提にして1.0以下にしたかったんだけど、 取り敢えずこれで走ってみることにしました。

2cc増やした燃焼室です。
 
 
さぁ、ナットにトルクかけてヘッド閉じちゃいましょうか。
 
前の方で、ナットからスタッドが飛び出てたので、 ディープソケットを使おうかな、と書きました。
で、仕事で立ち寄った工具屋さんでディープソケットを手に取ったときに、ちょっと待てよ、 ホントーにそれで良いのか?という疑念が湧いたんです。
 
ネジというのは実はバネなんです。
バネの形はしてませんが、ネジを締め付けた時の伸びによる弾性力で部品を押え付ける、 非常に固いバネなんです。
そのスタッドの有効長さが短くなるような位置でナットを締め付けるということは、 バネを一部カットしてしまうようなもの。
ヤマハさんはシリンダーやヘッドの寸法を積算してスタッドの長さを決めただけかもしれませんが、 スタッドの伸びから必要なスタッド長さを割り出して、 そのスタッド長さにあうようにシリンダーやヘッドの寸法を決めた可能性もあります。
つまり、元から付いてたスタッドを使うのなら、ナット取り付け面も変えないほうが良いのではないか? そう思ったんです。
 

というワケで、ディープソケットは買わずに帰り、 スタッド締め付けナットが空冷シリンダーの時と同じ位置になるように、 カサ上げ用のカラーをこしらえておいたんです。

カラーを使って組み上げたシリンダーヘッド。
効き目があるかどうか、ってのは多分未来永劫分からないと思うんだけど、 「基本に忠実なことをした」って気がして気分が良い。
 
 
 
いや〜、疲れた。
テキトーに設計するからこんなことになるワケなんだけど....
 
 
 

冷却経路引き回し編に続く

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