プーリーストッパー
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先日、所用でNoripapaさんとお会いしたとき、 「プライマリー(プーリー)を変速させすぎると、ベルトが突っ張って回転が伸びないことがあるみたい」 と話しておられました。その時点でNoripapaさんは実証済みだったんだけど、 いつか自車でも試してみようと思ってました。
その後、排気管をRealize社のShotGunチャンバーに変更。
10,000km超の走行と軽い抱付きで消耗しきっていたボアアップシリンダーをノーマルボアに戻すとともに、 排気ポートを軽加工、上げすぎだった燃焼室内圧を下げるなど、 過剰なパワー追求からバランス重視のセッティングへと移行してきました。
そんな中で先のプライマリースライディングシーブの過剰変速の是正も併せて試すことにしたワケです。
ボアダウンで低速域のリセットのために駆動系を開けることが多かったので、 丁度良い機会でもあったんですね。
事前検討
実効変速領域
プーリーセットを加工した際はシーブ面に油性ペンでマーキングをしてベルトの移動量を確認しいたんですが、 スライディングシーブの移動可能量の割りにベルト移動量は大きくなく、 プーリーの変速領域全てが使われているわけではないということは薄々感づいてました。
だいたいこんなもんです。
「どうせセカンダリに引っ張られる力とのバランスで、どっかで止まるんだろうから」 と、“大は小を兼ねる”方式でほったらかしていたんですが、 使っていない領域なんかいっそ殺してしまというのもバランスを重視するなら試してみる価値がありそうです。
図上検討
CADに入力したプライマリプーリーを単純に最大変速まで動かしてみると、 ベルトがプーリーの最外周まで到達するような図が生成されます。
しかし実際にマジックマークが残っている位置にベルトの形状を描いて、 その位置までプーリーを動かすとプライマリフィクストとの間に2.3mmほどの 隙間ができていることになります。
今回の改造のコンセプト「無駄な領域は確実にブロックする」を実現するため、 この2.3mmの隙間に入るようなスペーサーを入れて、 スライディングシーブの動きを止めることにします。
プーリーが最大変速に達する2.3mm手前で止めてしまうと、 ベルト巻き付き径は8mmも小さくなるので最高速度が20km/hくらい下がりそうですが、 この2.3mmが本当に無駄であるなら最高速が下がることはないはずです。
こんなんできました
特に力が掛かる部品でもないので真鍮でいいでしょ。
真鍮で強度が持たないくらいならアルミのプーリーのほうが 先に割れてますって。割ったことありますけどね。
必要な厚さは2.3mmですが、確実に止めたいので2.5mmで作ることにしました。
ベルトの腹とこすらないよう外径は27mm、ボスが貫通するので内径は21.05mm、 ボスワッシャをかわすための座グリを入れます。
取り付けはこんな感じ。
ただ入れるだけです。
実走行
最高速
落ちません。やっぱり残り2.3mmは無駄だったみたいです。
それどころか大台に乗ってから向かい風を受けたりしてもなかなか速度が落ちません。
「引っ張り過ぎると回転が落ちる」というのも本当かもしれません。 エンジンがある程度余裕を持って回転してるようで、 走行抵抗の変動による影響が小さいみたいです。
それよりもっと大きな変化が....
加速性能にも好影響が
スタートから70km/hになった辺りで“変速の終了”がはっきり分かるようになります。
といっても変速機ノーマルのG-Axisみたいに変速終了時に加速の谷が出るわけじゃありません。
スタートから一定回転(この時の仕様だと7,200r.p.m.)で変速して行き、 70km/hあたりで変速が終了するとそこから回転上昇が始まって最高速までスムースに伸びていきます。
ちょうどノーマルプーリーを付けた50ccスクーターのような小気味良い加速です。
変速が固定のままエンジンの回転変化だけで速度がコントロールされるので、 高速度域のスロットルレスポンスが良く、最高速を含めた高速域全体が元気になっている、 といった印象です。
考察
プーリーストッパーの有効性
最高速
引っ張りすぎで無駄なエネルギーを消費している、というのは真実だったようです。
ハイスピードプーリーの動作範囲を絞ったにもかかわらず、 最高速が落ちないどころか若干伸びたので、これは間違いないでしょう。
まさに「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですね。
問題点は無いのか?
まだはっきりと出てないのですが、下り坂での最高速の伸びが若干スポイルされることが予想されます。
無駄な変速領域とは言え、走行抵抗が少なくなる下り坂や送り風の場面では、 普段使われない変速域まで変速して5km/hほど最高速が伸びるんじゃないでしょうか?
でも最高速は「平地無風上体伏せずの殿様乗り」で出してこそオトコだと考えてるので、 高速度域全体のフィールが向上する“ストッパー有り”のほうがわたしには合っていると考えてます。
他のハイスピードプーリーでの有効性
これだけはモノが手元にないので何とも言えません。
ただ、わたしが使っているKITACOのパワードライブキットをはじめ、 一般にハイスピードプーリーの変速の特徴として、 ダラダラといつまでも変速中のような状態のまま、 シワジワと最高速に達するケースが多いと思います。
ウェイトローラーが止まる位置がはっきりとは決まってないので、 プーリーが止まる位置もはっきりと決まらないことが原因です。
このような変速の特徴があるプーリーで、
●マジックマークをしても外側マークが残る
●マークが残った位置にベルトを当てて、プライマリスライドとフィクストを近づけると スライドとフィクストの間に隙間が残る
ような場合は、隙間と同厚のストッパーを入れることで高速域の性能が上がる可能性があります。
この改造から浮かび上がった5FAプーリーの問題点
G-Axis以外のスクーターからG-Axisに乗り換えた方は、 加速中のいわゆる“変速の谷”にガッカリさられたんじゃないでしょうか?
プーリーストッパーを仕込んだハイスピードプーリーが、 まるで出来の良い(マトモな)ノーマルプーリーのような加速をするようになったので、 あらためて5FAノーマルダメプーリーの原因をアレコレ考えてみたんです。
ノーマルプーリーをヤスリか何かで削ってワイドレシオ化すると、 時に失敗してこのような変速の谷が出ることがありますが、 ノーマルプーリーで変速の谷があるスクーターはわたしも初めて乗りました。
この“手削り失敗プーリー”の原因は、 手で削った部分の寸法不安定による回転バランス喪失のためだと考えてました。
5FAプーリーを手にとってみると、わざわざ回転バランスを取った形跡があるので、 よもやバランスが崩れているはずは無いと思っていたのですが、 ウェイトローラーを実装した状態でバランスが崩れるのでは?と思い直したワケです。
ウェイトローラーを実装し、変速終了時にバランスを崩すとなると、 ウェイトローラーの最終停止位置を決める「外壁」の内側の位置がバラバラなんじゃないかと思い、 プーリー中心から外壁までの寸法を測ってみることにしました。
実際には、プーリースライド穴の側面から外壁までの寸法を測ります。
わたしの5FAプーリーは中心のメタルベアリングを抜いて、 KITACOパワードライブに移植しちゃったのでみなさんのお手元の5FAより2.5mm大きい数字が出ます。
プーリー内側の「BH-1」「5FA」が読める方向を正として、 便宜的に1〜6まで番号を振って測定すると、 1番と2番スロットの外壁だけが他より0.2mm内側に倒れている、 ということが分かりました。
そう言えば1番スロットの所にバランス取りの跡がありますね。
壁の内側から中心までの寸法が短いということは 1,2番スロットの外壁が厚い、つまり重いわけで、 その部分の肉を抜いてバランスを出したんでしょう。
ズバリでしたね。
6ヶあるウェイトローラーのうち2つが0.2mm内側で停止することになるので、 変速終了時(ノーマルでおよそ6,500r.p.m.)に突然回転バランスが崩れて、 変速の谷が出るということじゃないでしょうか?
考えてみるとバランス取り加工なんか施したノーマルプーリーなんて見たことありません。
これはヤマハが、
G-Axisに変速の谷が出ることを知っていた
変速の谷が出ることは問題だと考えていた
変速の谷はプーリーの回転バランス破綻により発生することを知っていた
ということを示していると考えられます。
プーリーの回転バランスが崩れていることに気がついたまでは良かったんですが、 プーリーの形状そのものが破綻を来たしていることまでは気がつかなかったみたいです。
わたしだって、まさかそんなところまで狂ってるとは今の今まで気がつきませんでしたからね。
ヤマハとしても考えられる手は施したものの、 どうしても改善されない変速の谷にサジを投げて、 見切り発車で発売しちゃったんでしょうか?
経過観察
プーリーストッパー設置後、400km走行
プーリーストッパー設置から400kmほど走行し、 WRを変更する機会があったのでプーリーを外して観察/写真撮影を行いました。
プーリーストッパーでプーリーの開きが強制的に止められるので、 設置前よりもクッキリとベルト跡が着いているかと思いきや、 設置前にあったベルト跡がきれいになくなってしまってます。
これがプーリーストッパー設置前の様子。
フィクストフェイスのほうにクッキリとベルトのカスが付着してます。
このベルト跡はベルトがシーブ面に擦れているキワを表すものなので、 プーリーストッパー設置でベルト最外周位置が固定されるとこの跡も着きやすくなると考えてました。
ストッパーでプーリーを止めるとよりベルトがリフトするんでしょうか?
イヤ、それは不自然な話ですね。
“5FAプーリー更正計画”
のために Noripapaさんにプーリーを借りに行ったときこの話をしてみると、 「プーリーの開きが止められることでベルトを無理に挟む力が無くなったために、 カスが付着しにくくなったのでは?」と話しておられました。
なるほどそのほうが自然に納得できますね。
そしてその推論をさらに進めて考えてみると、 ベルトを挟み付ける力はそのままベルトとシーブ面の摩擦抵抗となるわけで、 その摩擦が強すぎるとエンジンに対して回転抵抗になって、 結果最高回転がスポイルされると....
「ベルト引っ張りすぎによる抵抗」というのは物理現象で直接表現するなら、 「ベルトとシーブ面との摩擦抵抗」となるでしょう。
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