ヘッド面研と圧縮圧の関係

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G-Axis購入時から使用している純正(5FA)シリンダヘッドは、度重なる面研でもはや面研量不明、 またφ57シリンダに合わせてスキッシュエリアを広げてあるなど、チグハグな仕様になってしまってます。
なーんちゃって、とどのつまりは新しいパーツが欲しいヨーというわけで、 「G-Axis用より圧縮が高いらしい」というBw's100用のシリンダーヘッドを買ってきました。
 
また、最近ショットガンチャンバーを入手したんですが、 サイレンサーがコワレちゃって一時的にノーマルマフラーに戻しているこのチャンスに、 ノーマルシリンダ+ノーマルマフラーとの組み合わせでヘッド面研量と圧縮圧の関係を調べてみることにしました。
 



ヘッド比較

5FAヘッドはすでに削り込んであるのでノーマル状態じゃないんですが、 両者を見比べてみました。
 
ヘッド面研量が違うだけかと思ってたら、燃焼室形状が若干違います。

G-Axis純正5FAヘッド
燃焼室円錐の開きは約100°

Bw's純正4VPヘッド
燃焼室円錐の開きはほぼ90°
 
 
4VPのほうが円錐角度が狭くなるので、スキッシュエリアから上の燃焼室容積が若干小さいようです。
 
また、5FAのほうはすでに1.5mmほど面研してあるはずなのに、スキッシュエリアの段差が0.5mmほど残ってます。 と、いうことは最初は2mmほどあったわけで、対する4VPは最初から段差が1mmほどしかなく、 4VPのほうがスキッシュエリアの容積も小さいことになり、 全体として燃焼室容積が小さく、高圧縮設定となってることになるでしょう。



4VP圧縮測定

G-Axisのノーマルシリンダ/ピストンと無加工のBw's用4VPシリンダヘッドを組み付けて 圧縮を計りました。0.98MPa(9.8kg/cm^2)といったところでしょう。
フルノーマルのG-Axisがだいたい0.85〜0.9MPaだと聞いたことがあるのでやはりこんなもんだと思います。
<測定に用いた圧縮計の詳細>
 
 
今回取り付けたシリンダは、排気ポートの横幅を広げてあるんですが、 タイミングは変えてないので圧縮測定においてはノーマルと考えて良いと思います。
 
なお、上記の測定はエンジンが冷えた状態(以下、冷間と表現します)での測定です。
内燃機間の整備の常識として、「圧縮測定はエンジンが熱いうち(熱間)に」とよく聞くんですが、 イマイチ根拠が不明です。
実は今まで何度か、同じ仕様のエンジンを冷間と熱間で圧縮測定してみたんですが、 同じ仕様なのに熱間測定だと外気温によって測定値が上下するんです。
それに対して冷間測定では外気温にかかわらずエンジンの仕様が同じなら測定される圧縮圧も同じでした。
 
熱間測定を行うのにもなにか理由があるのかもしれませんが、 同じ仕様で冷間測定も行っておくことをお薦めしておきます。
特に、今回みたいにトッカエヒッカエ測定するようなときに一々エンジンを回してなんていられないので、 最後に冷間と熱間で測定して二つの測定値の相関関係さえ把握しておけば良いのです。
 
 
 



ヘッド加工工程

シリンダヘッドの加工の詳細を別ページに記載しました。興味のある方はクリックしてください。
 
<シリンダヘッドの加工の詳細>



4VPヘッド加工

実際に削っていきましょう。
 
今回は、面研後の圧縮圧が1.3MPa(13kg/cm^2)になるように削ろうと思います。 これは現在使ってるφ54ボアアップシリンダ+4VP改ヘッドの圧縮圧である1.2MPaを若干上回る圧縮にすることで、 ボアダウン(要はノーマルに戻すだけなんですが)によるトルク減少を相殺しようと考えているからです。



初期値、切削前、圧縮圧0.98MPa

切削前の圧縮測定値:0.98MPa(9.8kg/cm^2)



第一回目、0.5mm切削、総切削量0.5mm、圧縮圧1.1MPa

切削量0.5mmを目標に切削、加工後のヘッド厚さ:25.05mm
切削前は25.53mmでした。便宜的に25.5mmとしましょう。25.5-25.05で切削量0.45mm。
0.5mmにはちょっと足りませんでしたが、段々進めていこうと思います。

0.45mm削ったヘッドを組み付けて計った圧縮が1.1MPa(11kg/cm^2)
5FAヘッドは1.5mm削って1.2MPaなので、やはり4VPのほうが燃焼室が小さいみたいです。



第二回目、0.15mm切削、総切削量0.6mm、圧縮圧1.15MPa

先の切削量0.45mmに追加して0.15mm削ることで総切削量0.6mmを目指します。

加工完了。ヘッド厚さ24.90mm
25.5-24.9=0.6mmになりましたね。

圧縮圧は0.05MPa上がって1.15MPa(11.5kg/cm^2)になりました。
あと0.2mmほど削ると1.3MPaくらいになりそうです。



第三回目、0.1mm切削、総切削量0.7mm、圧縮圧1.17MPa

切削工程は第二回と同じなので省略します。
切削/研磨後のヘッド厚は24.80mm

圧縮圧は1.17MPa



第四回目、0.25mm切削、総切削量0.95mm、圧縮圧1.25MPa

切削/研磨後のヘッド厚は24.55mm

圧縮圧は1.25MPa(12.5kg/cm^2)



実使用評価その1



走行可能状態での冷間圧縮圧測定

これまでの、加工⇔測定の繰り返しは、エアクリーナー、マフラーを取外し、 かつエンジンに火を入れることなく測定してきたので、ヘッドは最後の状態(0.95mm切削−1.25MPa)のまま、 エアクリーナー、マフラーを取り付けて圧縮圧を測定してみましょう。

若干下がって1.2MPa(12kg/cm^2)
吸入/排気抵抗でスターター回転が下がったからでしょうか?



実走〜1.2MPa

前回の駆動系セッティングでWRが少々軽めのままだったんですが、丁度良いみたいです。 ボアダウンで若干トルクが下がるのは仕方ないみたいですが、 駆動系とバランスが取れたのがよかったようで、加速フィーリングはこちらのほうが良いと感じます。
 
振動が少なくスムースに回転が伸びます。まぁ、純正クランクはこのピストンとバランスが取れるように 作られているので当然かもしれません。
今回シリンダをバラしたのを機にピストンピンと小端ベアリングを新品にしておいたことも付け加えておきます。 なお、ピストンピンはG-Axis用より軽くて寸法が同じAdrress110のものを使ってます。
 
中速からの速度の伸びがφ54シリンダよりも良いです。前は60km/hくらいから速度上昇が鈍りはじめて、 80km/hで完全に頭打ちしていたのですが、80km/hまでスムースに伸びて90km/hまで出てしまいました。 これは排気ポートの横幅を広げてあることも関係してそうです。
 
ボアダウンで心配したほどトルクの減少はなく、中〜高回転のパワーが上がってるようで、 全体的にφ54シリンダより好感触です。でも考えてみればφ54シリンダは最近オイル切れで焼きつかせたことが あったんですよね。掃気ポート側にもけっこうヒドいキズが入ってたので、もう寿命だったのかもしれません。
 
φ54シリンダ+ショットガンで100km/h出ていたので、この純正シリンダと4VP改ヘッドにショットガンを組み合わせると 110km/h出るでしょうか?
なんちゃって、速度を1.1倍にするには1.21倍の出力が必要になるので、 シリンダ/ヘッドの変更で稼いだ+10km/hがそのまま過去の最高記録に上乗せできることはないでしょう。
でも排気ポートをもう少し広げて、ヘッドももう少し削って、早くショットガンを復帰させたいものです。



走行終了時(熱間)の圧縮圧測定

約20kmの試走直後に圧縮を計ってみました。
走行前(冷間)と変わらず1.2MPa(12kg/cm^2)
冬場には走行後のほうが0.5MPa下がったことがありました。



スキッシュエリアなんか取っちゃえ、エイッ!

4VPヘッドをどんどん削って0.95mmほど削ったら、スキッシュエリアの段差がほとんど無くなっちゃいました。 こんな、ほとんど無いようなもの残しておいても意味無さそうなので、 キレイサッパリ削り取っちゃうことにしましょう。

このようにまだウッスラとスキッシュエリアの段差の名残りがあります。
切削量は決めずにこれが消えるまで5回目の加工を進めます。



第五回目、0.15mm切削、総切削量1.10mm、圧縮圧1.3MPa

慎重に加工を進めていって、ちょうど燃焼室外環のR終端とヘッド面がツライチになるように加工しました。
その後、ヘッド面を研磨、Rとの接続線も耐水ペーパーと灯油で消しておきました。
“耐水ペーパー”として販売されている紙やすりは普通は耐油性もあるので、 よほど揮発性の高い有機溶剤で濡らさない限りは溶けたりすることはありません。

切削/研磨後のヘッド厚は24.40mm
総切削量は1.1mmになりました。

圧縮圧は1.3MPa(13kg/cm^2)
当初の目標値をクリアーする値が出て、取り敢えず満足して面研終了です。



実走〜1.3MPa

ノーマルマフラーに1.3MPaヘッドを入れて走ると、走り出してからの走行性能に体感差はないものの、 アイドリング中に不整脈が出始めました。
「トゥルルルル・・・・プスンッ、ルルルル・・・・プスンッ」と言う感じです。
 
また、ちょっと全開で走行した後にスロットル全閉で減速してると焼付き傾向の排気音がします。 「グワン、グワン、グワン、グワン....」と重たい共振音のような音がマフラーの消音室から 響きます。
 
焼付きの前兆で一番危ない“ジャダー音”は出てないので焼付くことはなさそうですが、 ノーマルマフラーからショットガンに戻したときに自体は一層深刻になりました。
 
不整脈は“不正爆発”であることがわかりました。 ノーマルマフラーでは時々スパークが飛んでないのかと感じてましたが、 ショットガンになると明らかに「バスンッ!!」とヘンな爆発を起こしてます。
しかも減速時には「グワン、グワン....」、加えてとうとう焼付き予告のジャダー音まで 出てきました。
 
ノーマルマフラー+1.3MPaヘッドでも若干異常、ショットガン+1.3MPaヘッドでは壊れるのは 時間の問題です。
圧縮を下げようと思いますが、スキッシュエリアが無くなるまで削ったヘッドの圧縮を どうやって下げましょうか?



上限が見えたのでマージンを付加します。

圧縮圧1.3MPaのエンジンは全般的に問題が発生して、 社外マフラーなんか入れた日には焼付きまで秒読み状態といったところなので、 1.2MPaくらいまで圧縮圧を下げることにしました。
 
圧縮を上げるのはヘッド面を削ればよいのですが、下げるにはどうしましょうか?
「ヘッド面を盛り上げる」なんてムチャ言わないでくださいね(笑)
常套手段としてはヘッドガスケットを余計に入れたりしますが、 付け焼刃的な手段だし、純正のガスケットを入れ直すとこれまでの切削結果から0.1MPaくらい下がっちゃいます。 目標値はちょうど0.1MPa下げの1.2MPaなんですが、微調整しながら下げたいので純正ガスケットは却下です。
 
厚さ違いのアルミ板や銅板でガスケット作り直すのも面倒ですし....



第六回目、スキッシュエリア新設、圧縮圧1.22MPa

前回の加工でスキッシュエリアを無くしておきましたが、 新たにスキッシュエリアを削り込むことで燃焼室容積を上げて圧縮を下げることにしました。
 
ここまでの一連の加工でヘッド切削量(=燃焼室容積の減少量)と圧力変動の関係がわかってるので、 圧縮下げ目標値に対しての加工量は事前に計算して目星を立てることができます。
 
0.05MPa(0.5kg/cm^2)ずつ下げて行こうと思います。
過去の圧力上昇値を見ると、0.15mm削ったときに0.05MPa圧力が上がってるので、 ボア52mm-0.15mm切削→3.2ccに相当するスキッシュエリアを作ることになります。
 
スキッシュエリアを作るときは燃焼室を囲んで環状の容積を削り出すので、 スキッシュ外径を53mmに設定して内径をだいたいで50mmに仮定すると、 1.3mm削り込むとちょうど3.15ccになります。
 
これを目安にして、あとはフィーリングで良さげなスキッシュエリアを作っていきましょう。

加工前のヘッド面。
スキッシュエリアは影も形もありません。

スキッシュエリアの外径を削り出して行きます。
隅にRを付けてみたかったので、R1のボールエンドミルで“U字”形に彫り込んで行きます。

“U字”形の切削で出来た土手を残してみることにしました。
土手を残すことにしたので切削量はサバを読んで1.3→1.5mmに変更しました。

1.22MPaといったところでしょうか。



実走〜1.22MPa

アイドリング中の不整脈だけは無くなりました。
 
でも例の、全開走行後の減速時の「グワン、グワン....」音が残ってます。
 
この時期、ショットガン用のサイレンサーを自作して、あまり調子が良くなかった(かなりウルサイ) ので長い全開走行はしてません。そのため“ジャダー音”の確認は出来てませんが、 「グワン、グワン....」が出てるし、ジャダーが出てなくても“気持ち良く乗れる仕様” とは言い難いので更にスキッシュを掘り下げて圧縮を下げることにしました。
 



第七回目、スキッシュエリア増量、圧縮圧1.17MPa

前回の加工で“U字”形に彫った後の土手を残しましたが、 今回はその土手を無くすとともにスキッシュの深さも増やして2mmまで削り込んでみることにしました。
 

土手を削りとってさらに0.5mm削りこんで、 最終的に深さ2mmのスキッシュエリアを形成しました。

ボールエンドミルで隅にRを作って終了。

取り付けて計ると1.17MPaといったところでした。



実走〜1.17MPa

自作4号機のサイレンサーでやっと気持ち良く乗れるまで騒音が減ったので、 ひさしぶりに何度か全開走行をしてみました。
 
おぉ〜「グワン、グワン....」は出ません。 ジャダー(全開時に排気音に「チャリチャリ、チリチリ」といった音が混じる)の発生もありません。
 
ノーマルボア+ショットガンの上限は1.2MPaということで納得して、 マージンを取って今回の1.17MPaでFIXしようと思います。
 



まとめ

今回の実験で、ヘッド切削量と圧縮上昇のだいたいの関係がわかると思います。
 
この測定結果はあくまでノーマルボアと4VPヘッドとの組み合わせによるものなので、 ボアアップシリンダやポートタイミングを変更したシリンダでは当然結果が違ってくるでしょう。
 
特にボアアップシリンダでは圧縮前のボア容積が大きくなっているにもかかわらず、 圧縮後の燃焼室容積はノーマルとほぼ同じなので、ヘッドを変えなくても圧縮は高くなりがちなので、 今回の例よりも控えめに削ったほうが良いでしょう。
まぁ、多めに削っておいてあとでヘッドガスケットで調整するという手はあります。
 
また、4VPヘッドと5FAヘッドは削る量が同じでも、出来あがったときの圧縮圧は4VPのほうが高いので、 新品ヘッドを取り寄せて加工する、という方は4VPを買ったほうが少ない労力で高圧縮を得ることができます。
逆に「加工までやる気はない」という方でも4VPヘッドに交換するだけでちょっとしたボアアップなみの トルクアップが得られるでしょう。
 
最後に今回手配した部品のうち、G-Axisのパーツリストに出ていない部品の型番と 2002/3時点での価格を記載しておきます。
 
4VPシリンダヘッド→型番:4VP-E1111-00、価格:\3,260
 
アド110ピストンピン→型番:12151-20910、価格:\470
 



圧縮測定値のナゾ

圧縮上げのある行程で、日付を挟んで同一仕様のシリンダの圧縮を計ったんですが....
 

前日の最後の測定から何もイジってない(圧縮計のプローブさえ付けっぱなしだった)のに、 なぜか測定値が0.1MPaも上がってます。

そのまま、こんどはエアクリーナーとマフラーを外して計って見ました。
ほとんど変わらないどころか若干下がってるし....
 
 
このときまではエアクリとマフラーを外したほうが高い値が出てたんですけど....
しかも前日の測定と条件が変わらないはずなのに数値が変わるとは....
 
このナゾに挑むべくweb検索の旅に出たんですが、4輪の整備データなどでは測定時の回転数が 指定されてるようです。なるほど考えてみればエアクリやマフラーが付いていても、 回転数なんかバッテリーのご機嫌次第でいくらでも変わりますもんね。
 
バッテリー&スターティングモーターでのクランキングじゃ回転を安定させるのは困難なので、 0.5MPaくらいは誤差と考えておいたほうがよさそうです。
 
できれば測定時の回転数も記録しておいたほうが良いでしょうし、 回転数が読み取れるくらい長くクランキングしたほうが測定値も安定するかもしれません。
その間にバッテリーがヘタッても回転数を記録しておけばあとで数値を補正できるでしょうしね。
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