フライホイール
(ジェネレータアウターローター)軽量化


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クランク軸に直結された発電機アウターローターを軽量化すると回転モーメントの減少により、 理論上レスポンスの向上が得られる。
スクーターの場合、駆動系のセッティングにも依存するけど、頻繁にスロットルを開閉するジムカーナのような 使用局面で特に効果の実感があるそうだ。
 
メリットがある反面デメリットも。
アウターローター外周を削り込むので当然強度が低下する。 またフライホイール効果※が下がるため高回転が回りにくくなるという話を耳にすることもある。
 
ただ市販車両では強度面の安全係数を高めに取ってあるので、 破壊に至らない程度の削り込み量を探って、あくまで自己責任でローターを軽量化してみるのも面白いと思う。
 
また高回転が回りにくくなるという話も、どうもレーシングマシンのようにインナーローター形式※に 改造したような極端な場合に発生するようで、アウターローターを削るくらいの軽量化では 有意差は現れないようだ。
 
 
フライホイール効果
ピストンの前後運動がクランクによって変換されて発生するエンジンの回転運動は不安定。
そこでクランク軸にある程度重量をもった回転体を連結することでエンジン回転の平滑化を図る、 そのための円盤をフライホイールと呼ぶのだが、小型化を旨とするモーターサイクル用エンジンでは 発電機アウターローターがフライホイールを兼ねていることが多い。
 
インナーローター形式
クランク軸に永久磁石の入ったローターを、それを囲むようにステーターコイルを配置した発電機方式。
重量のかさむローターを小さくできるのでエンジンのピックアップが向上する。
その反面、磁石の回転半径が小さくなり磁石とコイルがすれ違う速度が低下するので発電量が低下し、 前述のフライホイール効果が下がるためエンジンの回転が(特にアイドリング)不安定になる。
主にヘッドライト点灯の必要が無いレーシングエンジンに用いられる。





5FA(G-Axis)ローターの軽量化

Nap's世田谷のショーケースの中にAxis90用の軽量化ローターが陳列してあった。 ローター外周を単純に旋盤で削り込んだ形状だった。切削量は2mm前後といったところだった。
 
わたしの知り合いでも、業務用旋盤で削り込んだり町工場に持ち込んでローターを軽量化した方がいて、 その情報を総合すると「1.5mmくらいの切削量が適当」みたいだ。
 
いくら1.5mmで切削した人がいるからといって、1.5mm以下なら大丈夫という保証はない。 純正品を加工するのだからキケンな改造だが、この1.5mmを基本にしてそのほかにも 色々オリジナルな軽量化切削加工を施してみた。
 
 





クランク側の切削

まずローターの回転中心を治具にて芯出し。ローター回転軸を中心に回転切削してローター底面を削り出す。 のちにこの削り出したローター底面を正(しょう)にして加工機に固定してローター上面を削り出すためだ。
そしてクランク側ローター外側を回転信号ピックアップの突起まで削り込む。切削量は1mmとしてみた。 この加工で16g減量。





冷却ファン側の切削

ローターをひっくり返して、前述のクランク側の切削で削り出した平面とローター回転軸を 正にしてフライスの回転テーブルに固定する。
エンドミルを軽く当ててみると、エンドミルが触れるところと触れないところがあるのが見て取れる。 ローター中心軸と外周がズレてるのだ。偏芯量は0.1mm。まぁ、このくらいは仕方ない大量生産品なのだから。

切削完了。切削前のローター外径は105mm。切削後は102mm。
この加工で約70g減量。
最終的に557gとなった。元が660gくらい(切削を始めてから気付いて計ったので不正確)だったので 約100gの軽量化だ。





例によって失敗

やってもた。(笑
ピックアップ突起の根元が亀裂状に貫通しちゃった。この突起はローター内側から打ち出しているようで、 内部はドーム状にへこんでいるらしい。
隅にRを取れば良さそうだ。





走行感

たしかに若干レスポンスが向上がしているようだ。フィーリングレベルなので説明しにくいが、 キックダウン(30,40km/hくらいからスロットルONしたときの回転上昇)が若干鋭くなる。
 
ローター回転軸を中心にして削ったので回転バランスが上がるかと思ったが、 期待した効果は感じられなかった。ローター内側とそこに付いてる磁石の軸ズレは加工できないので当然か。
バランスを上げるならバランス取りをするのがスジというものだろう。
 
心配されたアイドリングにも不安定は出ないし、最高回転は逆に300r.p.m.ほど上がってしまった。
これは時期を同じくして簡易アーシングとプラグコード変更を行ったのでその効果かもしれない。
元々のローターが重過ぎだったならローターを軽量化することで回転が上がることもあるだろうが、 G-Axisの場合それほど重いということもなかったと思う。
 
性能向上も低下も微小、実走行による変形なども見られなかったということは、 まだまだ軽量化の余地があるということか。
どうせこのローターには一部亀裂が入っちゃってるので、新たにローターを買って加工寸法見直しの上 さらなる軽量化を目指してみようと思う。
新しいローターとしては後述する4VP(Bw's100)用のローターをステーターコイルとセットで 買ってみるのも良いかもしれない。
いずれにしろ新たなローターが届いたら今の5FAは壊れるまで軽量化して、壊れたら分解して中を見てみようと思う。
 
 





4VP(Bw's100)ローターの軽量化

ちょうどこの頃、ある方から「ショットガンチャンバーあげます」と言われていて、 その方はエアロックス用に4VPの予備ローターを軽量化加工することを考えているとのことだったので、 チャンバーとローター軽量化の物々交換ということで4VPローターの軽量化加工を引き受けることになった。
 
 

4VPローター(右側)は100.5mm。5FA(左側)は105mmだ。
4VPのほうが小径なのでそれだけ5FAより軽いのかと思っていたら5FAより重いとの事前情報。
手元に届いたローターを計ってみると708gだった。5FAローターが660gくらい(切削前に計るの忘れた) だったので確かに4VPのほうが重い。
これは4VPのほうがローター肉厚、内部の磁石の肉厚共に5FAより厚いためだ。
 
 

5FAと4VPの各ローターの断面図の比較。
 
 
ただし、4VPのほうが肉厚も奥行きもあるので5FAよりも切削量を稼ぐことができそうだ。
加えて、4VPのほうが元々の直径が小さいので、同じ回転数で回してもローターに掛かる遠心力も 5FAより小さくなるので4VPのほうが軽量化耐性が高いと考えることができる。





切削量の決定

4VPと5FAの違いを説明し、メール、掲示板上で協議の上、切削量1.7mmで進行することに。 また、前回のわたしの5FAの反省を盛り込みピックアップ突起のキワは大きくRを取ることとなった。
 
そして、先方の要望で冷却ファン取り付け面もファンの取付に影響を出さない寸法で1mm削り取ることとなった。





4VP切削完了

切削の行程は5FAとほぼ同じ。
加工部の隅にRを付けるので使用するエンドミルが若干異なるが、まずローター底面を整地して加工機に取り付け、 ファン取付面、ファン側外周、クランク側外周と加工を進めた。

ファン取付面とファン側外周を削り終わったところ。
5FAを削った当初、ファン取付面は削ってもあまり効果はないかと思ったが、 削り終わったファン取付面を見るとまんざらでもない。 こんど5FAのファン取付面も削ってみよう。

クランク側外周とローター底面の仕上げ加工を終わったところ。
4VPは5FAよりもマグネットカバー板とローター内壁の隙間が大きい。 ここに切屑が入り込むと掃除が厄介なので両面テープを細く切ってコヨリ状に巻いて隙間に詰めて 切削を行った。

加工完了の4VPローター。
加工部の外周径は97.1mm。

加工後重量は585gとなった。
5FAは加工後は577gだが、元が660gなので12.6%の軽量化。 対して4VPは708→585gなので17.4%の軽量化だ。 効果は走ってみないとわからないが、 加工前からの変化で考えると今回の4VPほうが効果が大きいことになる。
ただし、5FAのほうはファン取付面を削ればさらに軽量化できそうだ。
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