クラッチセンタースプリング換装


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セカンダリシーブの開きを制御している圧縮スプリング(一般的にクラッチセンタースプリングと呼ばれている) のプロフィールを変えると加速特性が変化する。
 
原理的には、強くすると加速性能向上と最高速ダウン、弱くすると加速低下と最高速アップが予想されるが、 プライマリの構成にも大きく依存するのでそう単純なものでもない。
 
論より証拠というワケで実際に上げ下げしてみよう。





取り敢えずメーカー純正で検討開始

Ka10さんのScooterTune.com 、“ヤマハJOG系駆動系部品採用機種情報”のコーナーに 様々な車両のセンタースプリング型番が掲載されているので、テキトーにピックアップして注文してみた。
 
ちなみに値段は2002/1月現在のもの。
 
 

型番:90501-35752 適用型式:1HH,1JX 初期型(通称:スリッパ)JOG/CHAMPなど多数
黒塗装に白ペイントマーク
自由長108、内径45.0、線径3.6、右5回巻き、\480

型番:90501-383E5 適用型式:3YKB,4LV リモコンJOG、アプリオなど
無塗装にオレンジペイントマーク
自由長101、内径45.0、線径3.9、左5回巻き、\550

型番:90501-402G0 適用型式:3WF,3VR JOG-90、Axis-90
無塗装/ペイントマーク無し
自由長94、内径44.6、線径4.0、左5回巻き、\790

型番:90501-405G5 適用型式:3YJ,4KN 7PS-JOG、GEARなど
無塗装に黒ペイントマーク
自由長68、線径4.0、左3回巻き、\550

型番:90501-402G2 適用型式:3NW2 Target90
無塗装/ペイントマーク無し
自由長94、内径44.7-45、線径3.9、左5回巻き

型番:90501-430K3 適用型式:4VP Bw's100
無塗装/ペイントマーク無し
自由長83、内径44.0、線径4.3、左4回巻き

型番:90501-404E0 適用型式:2GM,2XX CHAMP/JOG80
これは廃盤となっており、Axis90用の402G0で代替されている。
よって寸法、形状、価格は402G0と同一。
入手不可能なものが404とは笑える。
 
 
下2つはG-Axis用。

型番:90501-435L3 適用型式:5FA1(1型)
無塗装に赤ペイントマーク
自由長74、内径44.0、線径4.3、左3回巻き、\680

型番:90501-43002 適用型式:5FA2(2型)
無塗装に青ペイントマーク
自由長77(新品時78)、内径44.0、線径4.3、左3回巻き、\670
 
 
そのままは使えないけど、さるお方に貸していただいた(なんて書けばバレバレかも知れないけど)Majesty125用。

型番:90501-????? 適用型式:5CA?
無塗装に白スプレーマーク
自由長114、内径52.0、線径4.5、左5回巻き





測定装置の製作

では、各スプリングはどのような荷重特性を持っているのだろうか?
分からなければ測ればよいのだ。
 
以前から、家の体重計でバネ荷重を簡単に測れないかと思っていたのだ。 ちょうど良いので体重計を改造してみよう。
軸力(この場合バネの圧力)を正確に測定するには、基礎、バネ、ストッパを一直線上に配置するに限る。 体重計をバラしてみると、機器中央部は空洞なのが分かった。ここに貫通軸を作ればよい。

体重計上面フレーム中央には、何に使うのか8mmほどの穴があったので、 その穴に合わせて上面カバーにも穴を明ける。

上面の穴に合わせて底面フレームにも穴を明ける。
そこにM5の全ネジスタッドを立てることにしよう。t5のアルミの端材にM5のタップを立てて、 そのアルミ板をM3のビス2本で底面に固定する。

スタッドが立ったところ。

上面カバー中央部は本来人が乗らない部分なのでフニャフニャ。
剛性の高い体脂肪率測定電極にアルミチャンネルのブリッジを掛ける。
スタッド中ほどの駒はバネ押しハンドルストッパー。

ブリッジにバネを乗せて、その上にバネ押しハンドルを乗せる。
ハンドルにはダルマ穴が明けてある。ストッパーをくぐらせてからスライドさせて、 バネに圧力を掛けた位置でハンドルをとめる。

エイヤッ!と体重を掛けてハンドルを押して、ダルマ穴からストッパーが出てきたら ハンドルをスライドさせて負荷完了。
ストッパーの位置を上げ下げして「変速前荷重」と「変速後荷重」を測定する。





荷重測定

前述のように「変速前荷重」と「変速後荷重」を測定する。
 
G-Axisのセンタースプリング長は変速前(セカンダリAssy取外し時)で44mm、変速後(最大変速時)で31mm。 これは125cc以下のヤマハのスクーターはどれもいっしょだと思う。
 
ストッパー下面とブリッジ上面の間の寸法を47と34(ハンドルの厚さを加算する)にして 各スプリングの荷重を測定。何度か測定して一番多く出た数値を記録する。
ここで、「なんで?平均値を出さないの?」と思われるかもしれないが、 今回は製品のバラ付きを見るわけではないので、“最も上手に測定できた値”を記録するのだ。
ちゃんとスタッドとバネの中心をそろえて静かにハンドルをストッパーに掛けると、 だいたい2回測定で同じ値が出る。値がバラ付く時はブリッジの穴とスタッドが干渉していたり、 バネの中心がズレて測定時にバネが傾いていたりするものだ。
 
バネ定数は変速前、変速後の測定値の差をストローク13mmで割ったもの。
自由長→変速前のバネ定数まで計算すると線形にならなくて悩むかもしれないけど、 それでいいのだ。もともと非線形なのだから。

G-Axis1型の90501-435L3の変速前荷重:23.6kg

同90501-435L3の変速後荷重:34.8kg
こんな感じでチマチマ測定してゆく。
 
 
 
Majesty125用は取付寸法がわからないので、取り敢えず44-31mmで測定した。 バネ定数さえわかれば取付時の荷重は計算できる。





測定結果表

変速前荷重
(kg)
変速後荷重
(kg)
バネ定数
(kg/mm)
代表車種
90501-435L323.634.80.86G-Axis 1型
90501-4300226.038.00.92G-Axis 2型
90501-3575215.619.20.28スリッパJOG
90501-383E519.624.60.38現行JOG50
90501-402G020.226.60.49Axis90
90501-405G515.224.20.69GEAR
90501-402G220.626.80.48Target90
90501-430K325.033.80.68Bw's100
90501-404E0モノは402G0CHAMP80
90501-?????29.035.80.52Majesty125





スプリング変更





強化方向

G-Axis2型用は1型用をそっくり10%ほど荷重増加したプロフィールなので、 強化方向の変更としては2型用をそのまま取り付ければ良いだろう。
 





弱化方向

G-Axis1型に対してそのまま-10%になるようなものはないが、GEAR用がバネ定数が似てるので、 これにゲタを履かせると、-10〜15%の弱化が実現できる。
 





特性変化方向

元々のバネとバネ定数が異なるものを用いると、加速のタイミングやある領域だけ特性を変化させることが できそうだ。
 
Bw's100のものを用いたり、Axis90用にゲタを履かせて用いると、 変速開始時は強化型で変速の途中から弱化になるセッティングができそうだ。
 





ところでゲタなんか履かせてダイジョーブなのだろうか?


GEARのバネに7mmのゲタを履かせて、最大に変速した時の様子を模擬してみた。
セット(素線同士が接触すること)するまでにはだいぶ余裕がある。
この時の荷重は29.2kg。おおイイジャン。
 
 
通常、バネの設計ではバネがセットしたときに許容応力を超えないように形状決定しており、 使用時にはその許容応力のさらに80%以下で用いられる。つまりちゃんと設計されたバネなら、 セットしない範囲で使用していれば問題はないと言って良い。 ヤマハだって立派な機械メーカーなんだからそう非常識な設計はせんジャロ。
 
 
 
 

イキナリ-15%まで下げるのもどうかということで、7mmのゲタと2mmの上げ底を作ってみた。

7+2で合計9mmのゲタを履かせた状態。
変速前荷重で9.3%の弱化となる。

2mmの上げ底を取って、7mmゲタとしたところ。
変速前荷重で15.2%の弱化。





実走インプレ





435L3(G-Axis 2型用)

加速時のトルク感向上が見られる。3〜40km/hからスロットルを開けた瞬間に一瞬モタ付きがあるようなのだが、 そのモタ付きの後のトルクフィーリングが良い。
コンプレッションが高くなるのでベルトを挟みこむ力が強くなり、ベルト滑りが少なくなってトルク感が向上。 逆にセカンダリシーブのトルクカムの踏ん張りが強くなってキックダウンが一瞬遅れるのがモタ付きとなって 感じられている、というようにも推測できる。
 
最高速の低下はみられなかった。
 
熱ダレ耐性が上がっているようだ。最高速アタックの前と直後の発進でトルク感に相違がなかった。(夏場)
 





405G5(GEAR用)に7+2mmゲタ

 
 
滑らかというか軽快に回転する。WRのセッティングはそのまま9.5g×3+11.5g×3)なんだけど、 加速しないほど重たいというわけではない。ツーリング用とすると良いセッティングだと思う。
街乗りに使うならもうすこし軽いほうが良い。
つーわけで、手袋を買いに行ったSPORTS DEPO駐車場でWR交換。 9.5×3+10×3としたらあっさりベストセッティングが出た。
 
再加速のモタ付きは解消。30,40km/hあたりからスロットルを開けたときのキックダウンがすばやい。
 
ただ、0発進(スタートから減速開始までスロットル開けっぱなし)は強化センスプのほうが 良かったような気がする。強化センスプがベルトをガッチリ挟み込んで加速していた、ということか。 まぁそのせいでキックダウンが一瞬遅れるんだけど。
 
滑らかな回転でトルク感が薄れて遅い気がするだけかもしれないけど、 ノーマルキャブでも時々5cmほどフロントが浮くことがあった、あの「ガッツン」とクラッチが繋がる感じがない。
要は強化センスプはプライマリが開く(変速を開始する)のを強い圧力で押さえこんでいて、 発進時の減速比が高くなっていた(ローギアードな状態になっていた)ので、クラッチミートのあたりで車軸トルクが 稼げていた、ということなのだろう。
でもその「ガッツン」は平常加速の際にミート直後の妙な吹け上がりとなって出ていたのだが、 今回のセンスプ変更でそれが無くなった。センスプの抵抗が減ってプライマリの変速が先行するためだと思われる。
 
チャンバー装着などでスロットル全開直後に加速がモタ付くようなときはセンスプを緩めてみて、 WRをセンスプに合わせるようなセッティングが良いんじゃないだろうか?





402G0(Axis90用)に7+2mmゲタ

入りませんでした(笑





430K3(Bw's100用)

現在装着待ち。2次圧縮低減化を施したのち加速の低下を補う形で導入してみたい。
 
グラフに示した通り、変速開始時はG-Axis1型用より若干強めでスタートダッシュの向上が期待できる。
 
変速後期から終了にかけては1型用より過重が弱くなるので、再加速の低下はないものと考えられる。
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